■ アンドロイドの焦り

せっかくの土曜日なんだから出掛けようと黒子が提案する。
名前は出掛けようと言われても何処に?というような顔をするだけだ。
家族旅行すら彼女は行ったことがない。県外は疎か、市外すらあまり出たことがない。

『散歩とかガキかよ…』

「いえ、散歩ではなく、市外に行こうかと」

『何か欲しいものがあるの?』

遊ぶという感覚が麻痺した名前は本気で黒子に聞いた。黒子は少し困った顔をして軽い遠足に行かないかと質問を変えた。
そこで名前が怪訝な顔をしながら頷く。












***












市外の公園で名前は珍しいモノを見るようにしている。
近所の公園とは桁違いの滑り台やブランコに興味津々である。
そこで見つけたストバス広場。数人の男の人がバスケをしていた。

『わぁ…、バスケやってる』

黒子はといえばストバスから離れたベンチで犬と戯れている。
名前は入り口で色黒の人がダンクするのを見ていた。

「青峰っち、もっかい!!」

「黄瀬ぇ〜、もう勘弁してくれよ」

ボールが名前の元に転がり、そこで青峰と黄瀬が名前の存在に気がつく。
ストバスの端っこには緑の頭の人もいる。

『あ…』

「んだ?チビ」

「ちょ、青峰っち!!何ガン飛ばしてんスか!?」

金髪頭が慌てて名前に駆け寄ると、あのお兄ちゃん怖かったでしょ?と笑う。

「おいコラ!青峰エエェ!!」

向こうから汗だくの眉毛が分裂した人も駆け付けて来る。

「うるせぇ!!バ火神!!」

「んだと!?」

つかみ合う二人を眺めてると金髪の頭が、見ちゃダメっス!!と名前の視界を覆う。

『うぐっ』

金髪頭が名前を隠すように抱きしめた。

「見ちゃダメ!!ガチでっ」

『離してっ!!やだ、やだ!』

暴れる名前は黄瀬の顎を撲ってストバスの中へ逃げた。

「ゲフッ」

バタリと倒れた黄瀬に火神と青峰が喧嘩を止めて下品に笑う。

「黄瀬の奴、嫌われてやんの!!」

「ダッセェ!!」

「二人して酷いっス!!ほら、俺は大丈夫っスよ!?」

名前を追い掛ける黄瀬を青峰が止める。

「ヤメロ」

『き、キモチワルイ!!』

恐怖の表情を浮かべながらストバスから名前は出ていく。

「ギャー!!誤解っス!!待って!!」

黄瀬は事務所にこんなこと知られたら殺されると青峰を振り払い名前を追い掛けた。

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