■ アンドロイドは彼女を甘えさせたい

布団とは別に温かい感触。心地良さに目を覚ました。土曜日だからか黒子はまだ寝ていた。
名前は額を黒子の胸板に押し付け甘えるように服を掴んだ。
両親とはあまり仲が良くない。そのため名前の表情は貧しく、甘える行為をしたことがほとんど無い。

「ん…」

黒子が目を開けると名前がくっついていた。ベットの下に名前の抱きしめていたはずの人形が落ちている。
みるからに名前はいつもつまらなそうに、無表情で毎日を過ごしている。その表情はどこか寂しそうで、本当は人が恋しいのではないかと思った。

「(ボクが…、アンドロイドじゃなくて人間だったなら)」

黒子が名前の頭を見る。

「(名前をもっと甘えるさせられる…?)」

『テツヤ…?起きてたの?』

名前が顔を上げる。ついこの間まで小学生だった彼女は愛情を知っているのだろうか。

「名前…」

『なに?』

もぞもぞと動き、唇に触れるだけのキスをした。

「おはようございます(何をしてるんだ、ボクは…)」

名前はポカンとしたあと、少し微笑んで頬を薄く赤らめおはようと言った。
思っていた反応と違って黒子は安堵したと同時に嬉しかった。

『お腹すいた』

「はい。今起きます」

小さな一日が始まった。











***












名前が私服の上に黒子の上着を羽織っている。名前は黒子の上着が気に入ったようだった。
卓上にスクランブルエッグなどが並び、名前はいただきますと一言。

黒子が名前の向かいに座って嬉しそうに眺める。

『…美味しい』

「それは良かったです」

まるで夫婦のようなやり取りに名前は苦笑する。黒子はただ口元を少し緩めているくらいだ。
黒子の大人っぽい表情に名前は密かに憧れている。

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