■ アンドロイドに不思議な気持ちを抱く
入学式の翌日、新入生テストがあった。
理不尽な問題がたくさんでた。連立方程式だの、平方根だの…。黒子に教えてもらっていなければ今頃0点だろうなとおもった。
理科も大分卑怯な問題が出たが何とか乗り切り、放課後を迎える。
先生から颯爽と配られた答案は満点ばかりだ。
名前はそのことに安堵する。ただ、面白くなさそうなのが先生たちだ。
きっと0に近い点数を予想していたのに満点の生徒がいるとなれば、それこそ本当に面白くない。
名前だけが浮き立っていた。
クラスメイトはそんなことは気にせずに名前に群がる。
「苗字って頭良いんだな!」
「凄い!名前ちゃん、お友達になろう!!」
名前は愛想笑いをしながら受け答えをする。
クラスの中心になった名前がバックを掴んで、クラスメイトと別れて校門に行くと黒子がいた。
何故いるのかと思ったが、黒子は名前を見ると笑顔でおかえりと言ってくれる。
「迎えに来たんです」
手を差し出す黒子に名前は戸惑いつつも握った。
『べ、別にそんなことしなくたって』
ちょっと照れ臭くて黒子を横目で見上げた。肩に名前の頭が届きそうで届かないくらいの黒子の顔はなかなか見えない。
「春になると頭が変なおじさんとかおばさんが増えるんですよ」
『なに、その情報。気持ち悪い』
「ホントの話ですよ」
少し笑って黒子が見下ろす。
『……平気だと思うけどね』
黒子がダメです、とデコピンをして手を繋ぎ直す。
まるで恋人同士みたいな気分である。ぶかぶかでまだ固い制服は名前には不釣り合いだ。
「あ、買い物するのを忘れてました」
『財布とか通帳は渡してあるよね?』
「はい。ちゃんと預かっています」
夕日が眩しかった。毎日こんな日々が続くのかと思うと不思議だった。
彼は人間の形をした人口物でアンドロイドなのに。
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