■ アンドロイドは頭が良い
『むぅ…』
新入生テストの課題を進めている名前を黒子は後ろから眺めていた。
アンドロイドの説明書は意味不明すぎて読むのを諦めたのは、ついさっきのこと。
勉強机に向かう名前は頭を抱えて悩む。
それもそのはず、名前が解いているのは中学で習う方程式だ。何とも理不尽である。
「名前、この記号はエックスと読みます。この5X=10というのは5に何を掛けて10になるかと聞かれているんですよ」
『じゃあ、答えは2?』
黒子が頷くと名前は解答に2と書く。
「実はこれ、×の記号が省略されていて、Xにはどんな数字が入るか分からないんです。だから、5分の1を両辺に掛けるとXがわかる仕組みです。ほら、X=2ってなるでしょう」
軽いレクチャーをし名前は理解したように頷くと次の問いを指差した。
『じゃあこれは?こんな変な図形の面積なんて分からない』
困ったように言う名前に黒子は問題文のある場所を指差す。その時、背中に温かい感触に驚いた。本当に人間のような温かみに少し安心する。
「これ、知っていますか?パイと呼ぶんですが」
『知らない』
黒子は指差すのをやめた。同時に温かい感覚がなくなる。
「これは円周率です」
『円周率って3.14じゃないの?』
「いちいちそんなものを掛けていたらキリがないので。適当な文字に置き換えて、おおよその答えを導くのが中学数学です」
黒子の手が名前の鉛筆を一本拝借し描かれた図面。
「問題によると、母線が5cm、底辺が10cm、高さは不明の円錐の表面積、体積を求めよとあります」
『表面積って何?』
「表面積とは表面の面積です。この図を展開すると、扇形と呼ばれる図形と円がくっついた図になります」
扇形には公式もあるがややこしいので、母線と半径をかけて円の面積を足すと答えが出るだの、3.14は使ってはいけないだの言われながら丁寧に教えてくれた。
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