■ アンドロイドがやって来た

科学とは凄い。ここ数年で科学は著しく成長している。
名前が中学校に入学する数日前に入学祝いのアンドロイドを貰った。正直言って嬉しくない。
ただアンドロイドを貰ったのは理由があり、両親たちは仕事で海外に出向くため、広い家に取り残される名前の世話、お目付け役ということもある。
両親は先ほど空港へ行ってしまった。名前はマネキンがキョロキョロと目を動かし、ゆったりとした二足歩行をするのを想像する。
アンドロイドは高かったにちがいない。だから文句は言えない。

玄関のチャイムがなった。

『はぁーい、』

きっとアンドロイドだ。アンドロイドが届いたんだと名前は思いながら玄関のドアを開けた。

そこには水色の髪の男子が立っていた。驚いて固まる名前に合わせて彼は少し屈む。

「こんにちは。この度はロイド社のアンドロイドをお買い上げ頂き誠にありがとうございます。ボクはkr-05B、バージョン1.2.0のアンドロイドです」

彼はスラスラと意味不明な単語を並べる。

『あ、えと、どうも』

「人名は黒子テツヤです。好きに呼んでください」

にこりと微笑む黒子は人間そっくりである。

『…はあ、取り敢えず中に、…どうぞ』

「ありがとうございます」

失礼しますと彼は入って来た。
アンドロイドなんてまだあまり普及はしていない。珍しいものを見るような感じで名前は靴を脱ごうとする黒子を眺める。


靴を脱ぎ終わったと同時に目が合った。

「ボクの顔、何かついてますか?」

『……なにもついてないよ』

目を逸らし、リビングへ無言で歩きだした。
つい最近まで小学生だった名前の幼い顔が無表情で見ていたことに黒子は眉を寄せる。
黒子も名前に合わせて歩くとリビングに通された。

『お茶、飲める?』

「はい。アンドロイドでも食事を摂ることは可能です。基本は充電ですが」

じゃあ要らないじゃないのかと名前は思いつつお茶葉の缶を開けようとする。
がなかなか開かない。

『…あれ』

回しながら引っ張っても開かない。すると後ろから手が伸びてきて缶を取り上げられる。名前は驚いて見上げると黒子がいた。

「ボクが開けましょう」

きっと奮闘する名前を見て助けにきたに違いない。きゅぽんとマヌケな音をたてて缶が開く。

『………!開いた、…ありがとう』

「いいえ。ボクは家事と勉強を中心に構成されたアンドロイドですから」

キッチンと黒子に挟まれ動けない名前は居心地が悪そうに無表情になる。

『……………』

「…名前、」

呼び捨てされ、カタンと缶を置き黒子に突然後ろから抱きしめられる。

『………!?』

「可愛いですね」

『………!!??』

名前は目を見開き軽く抵抗する。

「中学一年生になるんですよね、まだ顔が幼いです」

頬を撫でる黒子に思わず呟いた。

『ろ、ロリコン…!』

「…心外です」

黒子が屈むと、すっぽり収まる名前は遮二無二に暴れた。

『ロリコン!!離して!』

いきなりセクハラ紛いの事をされ名前は軽く声を荒げる。

「…ロリコンじゃないです。テツヤって呼んでください」

手つきが少しずついやらしくなっていく。
腕を撫でたり、首を撫でたりする。

『テ、テツヤ!!やめろ!!』

恥ずかしくなり顔が熱いと思いながら叫んだ。
撫で回すのはやめた黒子はブスッとした顔で見上げてくる名前に微笑む。

「恥ずかしがり屋さんですね」

『あ、当たり前の反応だし!!』

黒子は無表情になる。容姿はそれなり、頭脳は大学生並。名前は淡々としており表情を変えないので、試しにちょっかいをかけてみた。
はっきりいうと可愛い。でも自分は


「(アンドロイドだから)」

こんな半殺しな悲劇は他にないだろう。

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