■ アンドロイドと雑誌

放課後、正門に行くと黒子が待っていてくれた。

「おかえりなさい。どうでした?」

『うん。楽しかった』

学校帰りにスーパーへ行くのも日課になりつつある。名前はふと思い出したのが先日会った金髪の人。

黒子を疑うわけではないが本当は知り合いのような気がしてならない。
確かにあの金髪の人は黒子と呼んだ。語尾に"っち"と付いていた気もするが、そこは置いておいて。

ジィッと穴が開きそうなくらいに見つめていると黒子は居心地悪そうに目を逸らした。

「…………あの、ボクの顔に何か付いてますか?」

『べつに』

「?」

探りを入れたいが、黒子から言うまで待つことにしているから、出来れば避けたい。
行き場のないため息が口から漏れた。

『はぁ…』






***






『テツヤー、一緒に寝よー?天井の染みが人の顔に見えて怖ーい』

棒読みして黒子の部屋に入る。堂々と入るがそこに黒子はいなかった。

『テーツーヤァー!どこですかー?』

無表情でくるくると回転しながらステップを踏むように黒子の部屋の中を歩き回る。

『エロ本探しちゃうよー?いいのー?』


シンッとした部屋。黒子は本当にどこに行ったのだろうか。
ガンッと机にぶつかる。机の上には雑誌が広げられていた。

『ありゃ?雑誌?』

名前が覗き込むと大きな字で"少年が行方不明!誘拐か…!?"と書かれていた。よくあるゴシップというやつだろうか。
表紙をチラリと見ると発行日が三年前の二月の上旬だった。随分と古い雑誌に名前は冷や汗をかいた。
何故かは分からない。

『…………』

また、見出しを見ると記事には不思議な事が書かれていた。

"T中学校の生徒、Kくんが謎の失踪!Kくんは部活の帰り道に突然姿を消した。またKくんの両親は同日に自殺をしており動機は謎。"

掲載されている写真を見ると名前と同じ学校の制服を来た青年の姿が写っている。目を懲らすが印刷が曖昧で目元にモザイクがかかっていた。

しかし名前の脳裏に浮かんだのは、

『……テツ、ヤ?』

全身の体温が下がっていくような気がした。


「はい。当たりです」

『…っ!?』

バッと振り返ると黒子が無表情で突っ立っている。

「その記事のKとはボクのことです」

『え…、な、なんで』

パクパクと口を開閉させて名前は雑誌と黒子を交互に見る。

「ボクのこと…、知りたいですか?」

名前は俯いた。

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