■ アンドロイドに恋をした
翌日、名前が黒子と手を繋いで学校に行った。
恥ずかしかったが黒子の行為を無駄には出来ない。正門に来ると手を解き、向き合う。
『今日は5限目までだから』
「はい。分かっています」
頭をポンポンと撫でられ名前はついに恥ずかしいと本音を漏らし、手を振り払った。
『じゃあね』
「はい。いってらっしゃい」
そして玄関で仲良くなった女の子達に囲まれる。
「おっはよ!!毎朝、年上彼氏に送ってもらってるって噂は本当だったんだね」
『え!?噂!?』
「知らないの〜?学年の噂になってるよ!!帰りも迎えに来てもらってぇ!!」
キャーと顔を赤らめて騒ぐ女の子達はまさに恋する乙女だ。
『彼氏じゃないよ』
苦笑しながら言うと皆はキョトンとする。そして一斉にうなだれた。
「はぁー…、何故わからんかね、ワトソンくん」
『え?…意味が分からないよシャーロックセンパイ』
名前の思考が絡まり、シャーロックセンパイなどと不思議な発言をした。
「いい?絶対、彼は名前に惚れている!!」
『彼って誰』
無表情になった名前の頬を一人の女の子が抓る。
「いつも名前を送迎している彼!!ホント鈍いよね。可愛い顔して中は天然鈍感無表情!!」
『……………』
もったいないと声を揃える友達に何の話だと名前は思った。
「彼は先週、三年生のケバいセンパイに逆ナンされていました!!しかし彼はポーカーフェイスとシカトを決め込み、最終的にはしつこいセンパイを追い払うためにこう言ったそうです!!」
『………………』
「貴女みたいな気持ち悪い(ケバい)顔の人には興味はありません。臭い匂い(香水)が移るんで半径5メートル以内に近づかないでください、って」
所々にキツイ表現が混じっている。簡単に想像がつく。化粧について男子は疎いし、黒子なら香水なんて考えに至らなかったのかもしれない。
『…テツヤなら有り得るかも』
「ほう。テツヤくんと言うのか」
「そのテツヤくんが最後に言った強烈な一言は"ボク、好きな子いるんで"だってええっ!!逆ナンされてそこまで言っちゃう人なんてあんまりいないよ!?」
何故か好きな子は名前では無い気がした。
だからか名前は蓋をしたはずの気持ちが沈んでいくのが分かった。
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