■ ええ好きですよ、悪いですか
彼は見た目に反して捻くれ者。素直になれないらしい。そんな彼も好きな人がいると言っていた。
別に興味なんて無いが、せっかく仲良くなったのだから好きな人は突き止めようと思う。
しかし深追いはするつもりはない。それで黒子が傷つくのは嫌だからだ。
放課後、体育館に委員会の仕事で行った。そこはバスケ部が汗を流して練習している。
名前も早く部活へ行きたいとソワソワするが仕事が終わりそうにない。
集会で使用する放送用の機材を持ち上げ、一歩下がる。
すると、ムニっと何かを踏んだ。バスケットボールの弾む音の中に名前の情けない悲鳴が小さく混じる。
『ひっ!?』
「こんばんは。委員会の仕事ですか?」
最近聞き慣れた声にハッとする。名前はムニっとした感触が声の主の足であることに気がつき、サッとどいた。
『ごめんなさい!黒子くんだったか…』
「足、…痛かったです」
『ごめんてば…』
機材を抱え直し改めて向き合う。黒子の顔を見た途端に今、このタイミングで好きな人が誰なのかを聞いてみようかと思った。
『ねぇ、黒子くん』
「なんですか?」
『前に好きな子いるって言ってたよね?お姉さんに教えてよ』
ニヤニヤとしながら見る名前に黒子は溜め息をついた。
「言うわけないでしょう。捻くれが治ったら、苗字さんに告白するんですから」
一瞬にして無言になった。名前は渇いた笑いを出して、黒子を見つめた。
黒子はキョトンとしたあと、あっと声をあげ真っ赤になる。
『ほぉ…、随分と捻くれて私を言い訳のタネにするかい』
「ち、ちがっ!ボクは!!」
『ボクは?』
「う…、苗字さんが!!ええ好きですよ、悪いですか!!」
ムキになる彼は珍しく感情をあらわにした。
名前はそんな黒子にありがとうと呟いて、頭を撫でた。
『よしよし、頑張った黒子くんと私は祝福を受けるべきである。私だって好きだよ?』
あまり恋愛対象としては見ていなかったが実は恋愛対象だったり。
「つ、付き合ってくれるんですか?」
『黒子くんなら大事にしてくれそうだし、捻くれてても可愛いしね』
最後の一言余計です、と言って黒子は名前の頬にキスをした。
捻くれた黒子くんと私。
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