■ それであなたが満足するならいいんじゃないですか

『黒子くんっ!!』

ドンッと軽く背中を小突くが黒子は無表情のまま振り向く。

「ビックリしました」

『ビックリしてるようには見えないよ』

朝練のあとで寝癖が酷かった。それが可愛くて黒子の頭を撫でた。

「あの…、恥ずかしいんでやめてください」

『私はお姉さん気質なのですよ』

黒子の頬が少し染まり目線を逸らす。

「………」

『あ、寝癖直してあげようか?』

「あ、汗くさいんでいいです」

捻くれが発動した。名前はそんなこと言わずに、と黒子を席に着かせポケットからコームを取り出した。
梳かす度にマイナスイオンが出るとか出ないとかで一時期有名になったあのコーム。

黒子の細い髪に通すと直ぐに真っ直ぐに整う。

『黒子くんさぁ、朝はブローとかしたら?直ぐに寝癖が直るんだけど』

「…朝練があるので」

『もうちょっと早く起きたら良いじゃん』

「…さすがにそれはキツイですね」

『そっか』

髪を弄りながら無言になった。
数分で綺麗に整った髪。




『黒子くん、できたよ』


「自分でやったほうが早いです」


『捻くれてんじゃないよ。お兄さん』


名前は満足そうに笑う。

「でも、それであなたが満足するならいいんじゃないかとも思えます」


『え…、』

クスリと笑う黒子の素直な言葉のようにも感じた。そのことが名前にとって嬉しかった。

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