■ ボクはそんなふうには笑えません

「名前さん、」

『ぎゃあっ!?』

昼休み、宿題を忘れたせいで、屋上の掃除をしていたら黒子の声が降ってきて思わず叫ぶ。

『く、黒子くん!?いつのまに…』

「さっきの間にです」

黒子は本を片手に突っ立っていた。

『驚いた…、普通に出て来てよ』

「ムリ、かもしれません。ボクは性格が捻くれてるらしいので…」


確かに言動は捻くれている気もする。はっきり言うと素直ではないと思う。意味もなく話し掛けるのも一例だ。

『まぁ…、捻くれててもいいんじゃない?』

笑いかけると黒子は困った顔をした。

「…それではダメなんです。捻くれていたら好きな人は振り向いてくれない気がするんで」

『おやおや、お兄さん。青春してるねぇ』

「いや、同い年でしょう」

黒子には冗談が通じないのだろうか。名前は掃除を再開する。

『まぁ細かいことは気にしないでよ!』

「ムリですね」

しれっと言った黒子が空を仰いだ。

『…黒子くん』


そんな様子を見ていた名前がカランとほうきを落とし黒子に駆け寄る。




『捻くれを自覚してるなら笑いなよ。無自覚ほど怖いものは無いよ?』


黒子の両の頬をつまみ無理矢理、笑ったような顔にする。

「ひゃめてくりゃしゃい」

『日本語しゃべってね』


手を離すと名前はにこりと笑って落ちたほうきを拾った。


「笑う…、ですか」

『黒子くんは表情筋硬いよね。毎日笑うと表情って柔らかいイメージになるんだよ?』


「でも、苗字さんみたいに、…ボクはそんなふうには笑えません」



『素直になれたら笑えるの!』

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