■ ボクはボク、あなたはあなたです
翌日、クラスを見渡す。昨日会った黒子を探しているのだ。
黒子は用もなく名前に話し掛けたらしい。意味はこれといって無いと自ら言っていた。
『(あ、いた…!!)』
窓側の席に座ろうとしている彼を見つける。スポーツバックを肩から提げているから部活の朝練のあとだろうか。
水色の後頭部は寝癖でぐちゃぐちゃだ。
席に座った彼はスポーツバックを下ろし寝癖を直しはじめる。
『(なんか可愛いなぁ…)』
微笑ましい光景に顔が緩む。
また目線を彼へ戻すと名前は唖然とした。
『(消えたっ!?)』
「苗字さん」
『ぶふっ』
思わず吹き出した。黒子が瞬間移動したかのように名前の席の前に立っていた。
「あんまりガン見しないでください」
寝癖が見事に消えた髪を弄りながら眠たそうに言う。
『あ、ごめんなさい。黒子くんが可愛いかなぁって見てたんだけどね』
「可愛くないです。ボク、男なんで」
ムスッとした表情で彼はいった。
『私も黒子くんくらい可愛かったらなぁ』
「十分可愛いですよ。それにボクはボク、あなたはあなたです」
『そっか、』
「………ボクは可愛いくないです」
『まだ言ってる…』
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