■ 間接キスは無意識に

 名前がテリヤキバーガーにかぶりつく。野菜がシャキシャキとなる。
 黒子がバニラシェイクをズゥッと吸い上げると、名前の方を見つめた。もぐもぐとテリヤキのソースを口のまわりにつけている。

「名前…、口のまわりが」

 名前を置くとナプキンを一枚、スタンドから拝借して手渡した。
 先ほどの照れが嘘のように、目線が口のまわりを拭いてと訴えている。仕方なく、黒子が拭うと、何事もなかったかのように食べるのを再開した。

「…こき使っただけですか」

 黒子の呆れたような声が聞こえても、名前はもぐもぐとテリヤキバーガーを食べていた。
 そんなリア充と呼ばれるような言動をしながらも自覚症状が互いにないのは致命的だ。周りの客に迷惑が掛かる。しかし、誰も二人の静かな暴走を止められるわけがない。

「…」

 名前がテリヤキバーガーを半分まで食べると、黒子に差し出した。
 それを受け取ると無言でテリヤキバーガーをかじる。

「…微妙ですね」

 黒子が言うと名前が目を逸らし、勝手にバニラシェイクを飲み始めた。咎めはしないが無くなってしまわないか黒子は心配そうである。しかし、名前は気にすることなく半分まで一気に飲み干した。
 テリヤキバーガーを黒子から奪うと大口で3口程度で食べつくす。ごくんと飲み込むころには、その様子を始終見ていた黒子の唖然とした目線が名前を捕まえていた。それさえ気にすることなく、今度はポテトをザラザラと口の中へ直接送り込む。

「…美味しかった」

「そうですか」

 いつもと違う味のテリヤキバーガーだったが彼女は満足だったらしい。



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