■ イエスしか聞こえませんね

 始業のチャイムが鳴った。
 名前が起きることは無く、黒子まであくびをしてしまう。
 暖かい日差しがカーテン越しに窓から入ってきているのが分かる。
 黒子は靴を脱いで、仕切のカーテンを閉めた。そして自分も布団に入る。名前の体温で暖かい布団は気持ちがよかった。



***



 名前が目覚めると夕方で、ちょうど清掃中であった。隣に寝ている黒子を見て、驚いたのは言うまでもないが、保健室に運んでくれたのも彼だと思うと感謝しかない。
 黒子の頭を撫でてみた。柔らかなくせ毛が指に心地好く絡む。

「黒子…くん」

 何となく苗字を読んでみる。すると黒子の手が、名前の首の後ろに周り、突然引き寄せられた。
 名前は黒子めがけて、ベッドに倒れ込む。

「ぎゃ」

「色気のない声ですね」

 はっきりとそう聞こえた。背中に腕がするりと周り、視界が反転すると、黒子が名前を押し倒したような状態になる。

「く、黒子くん!」

 黒子が目を細めて、名前の顔を強引に固定すると、唇を今度こそ貪った。
 自分とは違う女性特有の柔らかな唇を舐めて食む。名前が目をつむり、口を固く閉ざすのが分かったが、黒子には関係が無かった。
 ちゅうっと音をたてて吸うと名前が恥ずかしいのか、黒子の胸を押して、抵抗をはじめた。

「ふっ、う…」

 名前の目から一筋涙が零れた。それさえも無視して、黒子は一心に舐めたり吸ったりして戯れる。

「口を開いてください…」
 小さく囁くと名前は首を振って、黒子を睨んだ。
 しかし黒子には関係ない。まだまだ策はあるからだ。

「別に良いんですよ?今、軽く欲求不満なんでキスさせて貰えないなら、ちょっとくらい襲ったって…」

 名前の足の間に体を割り込ませ、胸に遠慮無く手を置いた。

「!」

 名前がジタバタと暴れだす。取り敢えず、胸に遠慮無く置かれた手だけでも退かしたいのか、黒子の腕を掴んで押し返す。
 黒子はそれが面白くて、制服に手をかけみる。

「だめっ!」

 やっと口を開いた名前が黒子を睨みつけた。

「僕には…イエスしか聞こえませんね」

 それだけ呟いてカーディガンのボタンを外しはじめた。
 名前が泣きそうなのも構わずに、黒子はスカーフも取り去った。

「やだよ…、黒子くん…」

 力無く言う名前は黒子に訴えていた。

「じゃあ、キスさせてください。どうせもうボクのなんですから、構わないでしょう?」

 黒子の意味不明な持論に名前は頷くことも出来なかったが、抵抗していた手の力を抜いた。

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