■ 無理しないでください、震えてますよ
昼休みにトボトボと科学準備室で実験用具を出していた。
科学の先生に頼まれてしまった。そういうことは係の人に頼んでほしい。
断ることも出来ずに顕微鏡を棚から出していた。また、他学年が電源装置を使用するから出しておいてくれと言われる始末。
顕微鏡はまだ軽いが電源装置は一つ3、4キロもあり両手で持たないと落としてしまいそうだった。棚の上の試験管に手を伸ばす。しかしあとちょっとなのに届かない。
『…おりゃ…………ッ』
足が震えて顔が熱くなってきた。すると棚から試験管がヒョイッと取られる。
『あっ』
「無理しないでください、震えてますよ」
背後から聞こえた声にドキリとする。
『黒子先生…』
「今日は何だか不憫ですね。いろいろと」
『…それはどういう意味ですか………』
黒子が意地悪い笑みを浮かべ、実験台に試験管を立てる。
「だから、いろいろです」
『…………』
黒子は名前に近づく。ちょっと怖くなり、名前は後ずさる。
壁に背中がくっついた。
「……苗字さん」
『な、ななんですか』
黒子がズイッと顔を寄せる。
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