■ 恋と憧れの違いはわかりますか?

翌日、少し長くなったスカートと第一ボタンだけを開けたブラウスで来た名前に黒子は微笑んだ。

「あんな不審者に狙われる格好は駄目ですよ」

『…はぁい』

名前は黒子に生徒指導として朝から呼び出された。主な原因は制服の着崩し。

「まぁ、以上です。あ、それと苗字さんに特別課題をあげますね。ボクの生徒指導に来てくれたお礼に」

『つくづく鬼ですよね。先生って』

「え?なにか言いましたか?」

『いいえ』

黒子のパソコンのディスプレイにはエクセルが表示されていた。
黒子は引き出しからプリントを数枚取り出して、名前に渡す。

「明日までにお願いしますね」

『………はい』

黒子は戻って良しと言ってエクセルと向き合う。しかし名前はその場を離れなかった。

「苗字さん、STが始まりますよ?」

見向きもせずにいう黒子のワイシャツの袖を掴んだ。

『私、先生に憧れてて、それで好きなんです』

黒子は目線を名前に移す。そしてため息混じりに言った。

「恋と憧れの違いはわかりますか?」

その言葉に名前はプリントを握り締め、泣きそうになるのを堪えて職員室を無言で出て行った。





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