■ 今度はもっとうまく誘ってくださいね
昼間、告白に失敗してしまった名前は少し気まずいなと思いながら、校内のシャボネットの補充をしていた。
クラスでは国語係をしている名前は黒子ともよく話す。それは課題の話や伝達、テスト範囲諸々だ。
しかも生徒と先生という時点でアウトだということは分かっている。でも想いは伝えたかったのだ。そのために友達に相談し、かわいい髪形で校則違反のスカート丈にニーハイで絶対領域がどうので万全だったはずなのに。
『はぁ…』
体育館の更衣室の洗面台のシャボネットを補充していると、背後で誰かが入って来たのがわかった。
思わず振り返ると、そこには黒子が立っていた。
「大きなため息ですね。さて問題です。大きなは?」
『連帯詞です…』
他人から見れば黒子の問題は支離滅裂であるが名前には何のことかよく分かった。
「正解です。あとパンツ見えてますよ」
『えッ!?』
ゴトンと手から滑り落ちたシャボネットのボトルが床にたたき付けられる。
ボトルからはシャボネットが零れだした。しかし黒子はのんきな顔でその様子を眺めている。
「ドット柄、かわいいですね」
『せんせっ!?み、見たら駄目ですッ!!』
名前がフラリと歩くと、シャボネットの水溜まりにヌルリと足を取られて黒子に突っ込んだ。
「おっと」
『ぎゃあっ!!』
ちゃんと受け止めてくれた黒子はにこやかに後で床を掃除するようにと言った。
「…それと、今度はもっとうまく誘ってくださいね」
黒子の言っている意味がわからずにポカンとする。
「シャツのボタン。開けすぎです。見えちゃいますよ?」
離れた黒子は入口付近でクスリと笑って出て行った。
『(は、はずかしいっ……!!)』
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