■ 36
朝、ポストを開けてみると手紙が入っていた。
黒子は珍しいと思って手紙の差出人を見た途端に顔が険しくなる。
「(赤司くんがボク宛てに…?)」
外だというのも構わずに、封を切った。
テツヤへ。
キセキを解散してから2年目だね。このゲームは僕が勝つ予定だったけど、二人で頑張るんだ。
僕の願いは叶った。だから、もう生きている意味は無い。
Act36
内容を見た途端に黒子はハッとした。赤司は満足だったのだろうか。
「(残り二人、いえ…ボクを含めて三人)」
決着の時は近いと黒子は思った。
西町の軍用の墓地に赤司が合流した。
「赤司っち、誰に負けたんスか!?」
緑間も驚いたような顔で赤司を見つめた。
「負けたんじゃなくて自殺したんだ」
「自殺!?」
緑間が目をまるくする。赤司はそれを面白そうに見ていた。
「願いが叶ったからね。人を殺す理由がなくなったんだよ」
「えと、確か…妹に会いたいっていう願いっスか?」
頷く赤司を見た黄瀬は目をきらめかせて、どんな子!?と聞いてくる。
「涼太と真太郎は知っているだろう?」
「身に覚えが無いのだよ」
「俺もっス」
「俺は遠目で見たことがある」
赤司はクスクスと笑ってネタばらしをした。
「黒子名前だよ。本名は赤司名前だけどね。一番最初に僕の妹を見つけたのはテツヤだよ」
「はぁ!?名前っちが!?赤司っちの!?」
「似てないのだよ」
「思った。でも怒った時の顔は何となくそっくりだったな」
「大輝、名前が怒っているとこを見たのかい?」
「まぁな。たまたま通り掛かったときに」
ズルイ、俺も見たかったっス!と黄瀬が喚いた。
***
『テツヤ、今日はお出かけしに行っても良い?』
赤司からの手紙を名前に見せることなく引き出しにしまった。
「別に良いですけど、どこに行くんですか?」
『友達。少し前に仲良くなったの』
仲良くなれるような時間なんてあっただろうか。少しそわそわしている名前を見ると怪しいことこの上ない。
「そうですか。気をつけて行ってください」
絶対に何かある。黒子は何となく感づいていた。
『うん』
「(絶対、ただ者じゃないですよね。その友達)」
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