■ 34-end world:2-

「名前!!どこだい!?」

母親も父親も見つからない。妹も見つからない。

庭の隅々まで探した。探しはじめて結構時間が経った。人里から離れた場所にある屋敷は火事に遭ったことすら知らない人が多いだろう。少し風邪気味のような気がした。
寒くなってきて足がガタガタと震えて泣きそうになる。

『おにいちゃぁん…』

小さく聞こえたその声は確かに、

「名前!!」


奥のガーデニングから聞こえた。焦げ臭いガーデニングは丸焼けしており、その中心に名前がいた。













Act34 end world:2.














『おにいちゃん…』

駆け寄って抱きしめる。

「大丈夫。…大丈夫だよ。僕がいるから…」

冷えた体を寄せ合い、名前をおぶって全焼した屋敷に入る。

背中にしがみつく妹はガタガタと震えて『怖い』としか言わない。

1階と2階に死体があったため両親は死んだのだと思う。自分はお兄ちゃんだから泣いてはいけない、と言い聞かせて名前に見せないように進んだ。

何も残っていない屋敷で赤司は唖然とする。どうやって脱出したかは分からないが、自分は無傷。名前も恐らく無傷。しかし子供部屋には赤い文字が広がっていた。





"ボクに勝ったら許してあげる。ボクに勝ったら願いを何でも叶えてあげる。"






***












行く宛ても無いが街まで名前を背負って下りてきた。パジャマでボサボサ頭の双子は汚いものを見るような目で見られ、誰も助けることはしなかった。

スラム街で食料を支給している、と聞いた。

どごぞのパン屋のオヤジが言っていた。名前は泣きながら震えているし、お腹も減っているだろうから、仕方なくスラム街に向かった。

「(スリッパ履いてて良かった)」

赤司は足元を見て顔を歪める。ゴミだらけで裸足で歩けば傷付くのは目に見えている。名前はスリッパを履いていない、というか普段から履いていなかった気がした。

『お兄ちゃん…、お兄ちゃん…、どこにいるの…?』

「大丈夫、側にいるよ」

人だかりの中を掻き分けて支給された食料を二人分、受け取った。
そのまま、少し離れた場所で名前と朝食を摂る。

『お兄ちゃんがいないの…』

「目の前にいるよ」

名前の様子がおかしい。けど、どうすることも出来ない。
そんなとき、ある少年が来た。

「一緒に食べて良いですか?」

断る理由も無い。赤司は頷いた。

『お兄ちゃん、どこ?』

「だからここにいるって言っているだろう?」

赤司は少年に少し謝って名前をあやす。少年は不思議そうな顔をした。

「炎と意思の疎通…、二人目と三人目ですか?」

赤司は泣き出してしまった名前を撫でながら少年の方を振り返った。

「何か言ったかい?」

「いえ。……二人は双子ですか?」

少年はスープを啜りながら問う。よく見れば水色の髪の毛と変わった風貌だ。

「そうだよ。あまり似てないけどね」

「そうですか?そっくりですよ」

少年は残りの朝食を食べて、こっちです、と言って歩いて行った。赤司も名前を再び背負って少年の後を追い掛けた。

「どこに行くんだい?」

「秘密基地です。ボクはそこで仲間を集めてスラムから、いつか抜け出すつもりです」

帰る場所が無いならボクと来ませんか?て少年は赤司と名前を見た。

「…………でも僕たち両親がいないんだ」

「そんなのボクもですよ」

少年はしれっと答えて歩き続ける。

「…………」

「どうですか?」

少し考えた。しばらくして名前が泣きつかれて寝ているのを見て決心する。

「行こう。ボクは名前を守る義務があるからね。スラムは今日初めて来たんだ」

「ありがとうございます。ボクは黒子テツヤといいます」

「ボクは赤司征十郎だ。そして妹の赤司名前」

互いに自己紹介した。

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