■ 33-end world-

「なんて綺麗な眺めなんだろう。ねぇ、名前」

『…そうだね。お兄ちゃん』

赤司はずっと昔にした妹との会話を思い出した。よく一緒に近所の湖で星を眺めたものだ。

今も昔も変わらないこの夜空と、変貌した屋敷。懐かしい故郷に出向いた。
炭で黒々とした屋敷は幼い頃に住んでいた家。
今日はここで一晩を過ごす。











Act33 end world.













封筒の宛名に黒子の家の住所を書き、便箋を何枚か取り出す。



テツヤへ。


キセキを解散してから2年目だね。このゲームは僕が勝つ予定だったけど、二人で頑張るんだ。
僕の願いは叶った。だから、もう生きている意味は無い。




それだけ書いて封筒に入れ封をした。












***












『お兄ちゃん!待って!』

「名前、早く」

赤い髪がふわふわと二人分揺れている。

『むりだよぉ!お兄ちゃん、足速いんだもん』

「すべてに勝つ僕は正しいからね」

夕方、門限ギリギリになり慌てて帰る兄妹。珍しくもない光景だ。

二人で息を切らして家の門をくぐった。


「ただいま」

『だだいまぁ!』

二人がそう言えば親は、おかえりと言って抱きしめてくれる。
そんな幸せな日々は8歳になったときに突如途切れた。

始まりは名前の話からだった。

『あのね私、何でもない所から炎を出せるようになったんだよ』

嘘だろう、と赤司は茶化したが、いたって名前は真剣だった。

「だって、信じられないよ」

『そんなこと無いよ!お兄ちゃんも絶対出来るよ!!ほら丹田に力を込めて…』

人差し指の腹を天井に向け、目をつむる名前を赤司は、ずっと見ていた。

ポッと音をたてて指先に現れた炎。赤司は目を見開いて真似してみる。

『お兄ちゃんはすごいから何でもできるの。だからこんなことくらい…』

チリチリと焦げ臭いのに気がついた。名前は話をいったん止めた。
赤司も目を開ける。

「なんかこの部屋、臭くないかい?」

『…うん。焦げ臭いというか』

暑い、と言いかけた赤司は自分の手元を見た。炎は出ていないが、近くにあった人形が燃えている。

[……っ!!火事だっ!!]

赤司はすぐさま立ち上がった。

「お兄ちゃん。頭でお話出来るんだね」

[何を言ってるんだい!?はやく逃げないと]

途端に眠気に襲われる。歪んだ視線の先には心配そうな名前。
意識はそこで途切れた。












朝日が眩しくて目が覚めた。全身が痛くて起き上がろうとしてもなかなか思うようには動けない。

肌寒い。ふと周りを見渡せば見慣れた赤司家の家の庭。

「あれ?なんで庭で寝て…」

意識がはっきりして、キョロキョロと周りを見渡す。

「名前!!名前!どこにいるんだい!?」

昨日、火事だというのに睡魔に負けた自分はどうかしている。
痛むからだを叱咤するように撫で、無理矢理立ち上がる。…焦げ臭い。

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