■ 32-future:3-

契約者。世間では2年前に現れた謎の集団。男女問わず、国に反抗する一部の者たちに与えられた能力。世界に残る契約者と呼ばれる者の類は、もう大日帝にしか居ない。

「契約者と始めに呼んだのはボクです。契約者は世界と契約し、自らの願いのために戦います」

青峰は物影からそっと黒子を窺う。

「青峰だって世界と契約したんですよ。そして世界中にいる契約者を殺し、今に至ります。ボクの願いは世界を壊すこと、醜いこの世界を刑に処すこと」

「(狂ってやがる…!)」












Act32 future:3.













「赤司くんよりボクの方が強いですよ…?青峰 大輝くん?」

青峰がハッとして窺っていた場所には黒子の姿は無くて冷や汗が流れた。

「…っ」

ジャリっと砂が鳴って振り返れば黒子の姿。

「さようなら。楽しかったですよ」

「(いつの間にっ!?)」












グシャッ















***












『赤司イイイィィィッ!!』

「ボクは真実を言ったまでだ」

激怒した名前は棒を振り回したが、かわされてしまう。

『嘘だっ!!私はテツヤの妹だ!』

「妹でも義理だろう?」

違うと言い聞かせる。

『嘘つき!!赤司さんが私の兄なんて証拠、無いじゃないっ!!』

「あるさ。例えば目つき、髪質、髪の色…」

名前は自分の髪の毛を見た。生え際の薄い赤。

『違う…!!』

「子供でもストレスが溜まれば髪は抜ける。名前は子供白髪という部類だよ」

地毛じゃないのか、と思うと途端に恐ろしくなった。

『そんなの…!!』

「テツヤという新しい家族のおかげかな?」

『信じないっ!!私は赤司さんの妹なんかじゃ…』

棒を振り下ろすが弾かれ、よろけた拍子に赤司に手を掴まれた。

「いい加減に信じなよ…。名前は僕の妹。ちなみに言うと名前はテツヤを恋愛対象として見ている」

『…はぁ?』

それこそ信じられない話だ。赤司に掴まれた手を振りほどき名前は踵を返した。

「帰るのかい?」

『約束の時間に遅れる。そして、次会ったら絶対に…』

「殺すのかい?」

『…テツヤの願が叶うなら。ううん、私が叶えてみせる』

ショルダーバッグを握りしめ名前は歩き出した。

「またね。能力を分かち合った双子の妹」

名前は眉間にシワを寄せて赤司に聞こえないように呟いた。

『だから、違うっつの』









名前が去った後、赤司は溜め息をついた。

「(いいのかい?名前、テツヤの願いと名前の願いは掛け離れているよ…)」

赤司にとってたった一人の妹。もう、覚えていないのだろうか。
ずっと、ずっと再開出来ることを、願っていたのに。でも、名前とは再開出来た。願いは叶ったのだ。

「(もう、契約者でいる必要も無い…)」

赤司の頬に涙が一筋、伝った。

「テツヤ、名前を泣かしたら許さないからね」

雪がちらちらと降って来る。
  . .
「最期の仕事を片付けようかね。きっと、また会えるから」












***












『征十郎…』

結局、苗字呼びになってしまった。
帰り道、赤司が言ったテツヤが恋愛対象について考えていた。

考えれば考える程、不思議な話である。
心当たりがない。そこまで鈍いつもりは無かった。しかし、気がつかなかったのはやはり鈍いからなのだろうか。

『いや、絶対に違う』

確かに清楚でカッコイイが何か抜けているような気もする黒子。

『やっぱ、無い無い…』

5時までに帰らないと黒子に怒られる。
バスに乗り込んだ。











***












『ただいま』

そう言えば、おかえりと返事がする。エプロン姿で出て来た黒子は名前をリビングへ連れていく。

「巡回はどうでしたか?」

『うん。赤司さんに会った』

「え!?」

よく、無傷で、と黒子が言った。

『今は停戦してるの』

「つまり、何か話してきたんですね」

真剣な顔付きの名前は誰かとそっくりな気がした。黒子は名前が真面目な顔になると、毎回そう思うのだ。

『テツヤ、状況報告をしよう』

赤司に会った、と名前は言っていた。名前のあの顔は赤司だ。赤司に似ている。

途端に黒子は神様はなんて酷いのか、と思ってしまった。

「状況報告…、そうですね。ではボクから。今日は青峰くんに会いました。…そして仕留めました。契約者の数は名前さんを合わせて3人です」

黒子と名前は椅子に座る。黒子の話しは短い。座っている間に終わった。

『私は赤司さんに会った。少し接戦をしたけど怪我はないよ。勝てる気はしなかったから戦うのはやめた。それと……』

口ごもる。黒子は足を組んだ。

「それと?」

『私、赤司さん…』

黒子の眉がピクリと動いた。

「名前さん?」

『…っ!!あっ、えと、赤司さんにテツヤのこと恋愛対象として見ているって言われ…、あ』

二人して固まってしまった。

「………………」

『いや、そんな兄妹で変なことは…。違うっ!忘れてっ!!テツヤは確かに清楚でカッコイイけどパンツ特集読んじゃうようなお年頃って知ってるよ!?』

「…………はい(違います。いろんな意味で)」

『だから、安心してエロ本を買ってね!?』

「…………………………はい(いりません)」

名前は溜め息をついた。まさか、これでごまかしたつもりなのかと黒子は思う。

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