■ 31-future:2-
青峰が接戦で壊した瓦礫に隠れながら驚いた。
「(テツが一人目の契約者!?)」
青峰には黒子については契約者なのだと大体の予想をしていた。というよりキセキ全員がそう感づいていたのも知っている。しかし能力が開花したのはキセキより後だと思っていた。
そもそも本当かも分からない事実に口出しするつもりも無い。
「ボクは一人目で殺し合いのゲームの原点です。ボクが8歳のときに死んでいればこんなことにはならなかったでしょう」
一体、何を言いたいのか分からないが、不吉なのは変わらない。
「聞いてくれますか?真実を。どうせ死ぬんですから良いですよね?」
黒子の腹黒い笑みが物影からでも容易に想像できた。
Act31 future:2.
スラム抹殺計画。スラムを抹殺するための計画。黒子もスラム暮らしだったために対象として扱われた。
黒子が8歳になったその年、国軍によって一部のスラムが焼かれた。
小さな板張りの家では黒子と名前すら思い出せないが育ててくれた女性がいた。女性は黒子を拾う数日前に実の息子と娘が行方不明になり放浪していた。スラムで行方不明と言ったら死んだか奴隷として連れていかれたかのどちらかだ。
黒子を拾った時、絶対に守ると言ってくれたのを今でも覚えている。
しかし別れは突然やって来た。
「テツヤ、この箱から出てはダメ。絶対に。何があっても声を出してはいけない」
パタンと閉じられた箱。黒子は戸惑いを隠せずに隙間から覗いていた。
視界には整然と義母が座っている。これから何が起こるというのか。雰囲気は良くない。黒子は泣きたかったが絶対に声を出してはいけないが為に必死に、耐えた。
ノックがして義母が返事をした途端に国軍兵が乗り込み、銃声がする。広がる紅に驚いた。
目を見開いて箱の隙間から覗いていた黒子は口元を手で抑え込み、涙を流す。
「……おかあさん」
呟いた言葉は淡く消え、箱が開かれ国軍兵に見つかった。一気に渦巻く憎悪、憤怒、恨み。
「こんなとこにガキが…。悪いが死んでもらう」
「……………っ」
たかが国軍兵一人。負けてたまるか。そう思っていた。
黒子はキッと睨みつける。国軍兵は銃を向けた。
「貴方なんかキライです…。世界は二回も……おかあさんを殺した…!」
向けられた銃を掴み、子供とは思えないような火事場の馬鹿力で投げ捨てた。
「おとなしくしやがれっ」
黒子は箱の中に入っていた、短刀を鞘から抜き、大きく振り上げる。
「ああぁぁぁぁぁああああっ!!!!!!」
絶叫と共に国軍兵が倒れ全てを引き裂く。
「許さないっ!!ボクはっ…!!世界を!絶対に…!!許さないっ!!!!!!」
黒子は短刀を握りしめ家を向かしのように抜け出した。この時、黒子と目を合わせた者は全身から血を噴き出し倒れ、接戦した者は短刀一つでズタズタに引き裂かれる。
一人目の契約者。黒子テツヤ。能力はクラッシュ。身体の内部を破壊する能力。誰が言ったのかは分からないが、気が付けば一人目と名乗っていた。
契約者の出現は2年前と言われているが実はもっと前。黒子が8歳になった年だ。つまり7年も前である。
そしてキセキに会うのが14歳のとき。二年後にはそれぞれの道を歩み、今が決別のときだ。
黒子のいつも眼帯が付いている左目はそれぞれの道を歩む際に代償を払った後遺症である。その話はさて置き…。
***
驚愕した。黒子がいろいろ過去に辛いことがあったのは知っている。
しかし、黒子が契約者と確信に繋がった以上、この対峙している時点で、決着をつけるのは明らかだ。
「一方的に話してしまいましたが、だいたいこんな感じですよ」
愉快そうに笑う黒子は一歩、踏み出した。
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