■ 08

 夢を見た。黄瀬を殺す夢。ボクは軍人で裏切り者だった。
 名前としがない町工場の工場で黄瀬と戦ったのだ。
 名前が座り込んだ所でボクは黄瀬をナイフで刺した。ボクは笑っている。なぜ?なぜ、友人を殺している?
 これが名前が言っていた、ゲームなのだろうか。

 倒れた黄瀬は何かを言っている。ボクは黄瀬が事切れるのを待っていた。






「黄瀬くん。このピアスはボクとの約束です」



 …何の約束?








Act08









 練習が終わる頃、黒子のスポーツバックには名前からのメモがあった。
 先に帰るという文字に黒子は顔を歪める。自分では不服なのだろうか。
 名前が苦しそうな顔で出て行った想像をしてしまう。夕べの夢も最悪だが、日常も最悪だ。

 黒子はため息混じりに、リコに話し掛ける。

「すいません、早退します」

 リコは黒子の表情を見て何を思ったかは分からないが心配そうに分かったわと言って黒子を見送ってくれた。皆に心配を掛けるわけにはいかないのだ。
 黒子は頬を叩いた。

「よし…」

 気合いを入れて、黒子は大型ショッピングセンターに足を運んだ。







∝∝∝∝








 女の子向けの雑貨屋にピアス売り場があった。思わず足を止める。
 男がそんな場所に入るのは恥ずかしいが仕方が無い。
 黒子を見兼ねた店員が駆け寄って来る。影の薄い黒子を見つけたのかと思うと驚きだ。

「いらっしゃいませ。彼女へのプレゼントですか?」

「え、あ…、そうです。学生なのでイヤーカフを探してて…」

 黒子が言うと店員は笑顔で、それでしたら…と商品のショーケースを移動し、黒子もついていく。

「こちらはどうでしょう。学生の財布にも耳にも優しいイヤーカフです」

 うまい口車だと黒子は苦笑する。ショーケースを覗き込むと、ペアのイヤーカフでそれぞれに小さく細工がしてあった。
 ストーンがちょこんと付いており、可愛らしい花が一つだけ、模様として削られていた。

「……これは」

「彼女さんとペアになってるんですよ。当店ではオススメですね」

 黒子は財布の中身を想像し、今月はバニラシェイクは飲めないなと思いながら、買いますと頷いた。







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