■ 03
ムカつく。なんで!なんでコイツが、隣の席なの!?
「おはようございます」
『……』
黒子は、すまし顔で挨拶をする。宣戦布告をされた昨日の今日で最悪な事実。
なぜ入学式の時点で気がつかなかった!!私っ!!
自己嫌悪しても遅い。
「マネージャーしないんですか?」
『しない』
クスクスと笑う黒子は見事なまでに腹黒さで歪んだ顔で見つめてくる。
「どうしてですか?」
そんなのアンタが一番知ってる。
『うるさい。黙ってられないわけ?』
「名前さん、怖いんでしょう?イジメられるのが。前々から思ってましたが名前さんって情緒不安定ですよね」
仕方ない人ですね、と笑うが誰のせいだ。
『…………』
キッと睨めば黒子は腹黒い表情から一変し前の席の火神とかいう奴に挨拶を交わしている。
あぁ、情緒不安定なのはアンタのせい。誰のせいだとか遠回しに言うまでもなくアンタだよ。こんの腹黒子!!
***
「えーと、じゃあこの古文を黒子!!」
黒子は寝ている。このまま叱られちまえ。
「いないのかー?黒子は欠席か。なら苗字!!読め」
『!?』
コイツ、寝てるんだけど!?
「早く読まないと怒られますよ」
ボソリと呟かれた黒子の声がムカつきガタッと楽しみ立ち上がった。
始終ニコニコと見ていたコイツはムカつくことこの上ない。
そんな私に至福のときが来た。それはお昼だ。
パカッとお弁当の蓋を開ける。
『今日も美味しそう』
お母さんに感謝しつつ食べはじめた。この時の為に生きてるよ。
「本当、名前さんのお母さんって料理上手いですよね。この唐揚げとか美味しいです」
『!?ちょっ!?黒子!止めてよ!!自分の食えよ』
「火神くん。名前さんのお弁当美味しいですよ」
「お!?ホントだな!」
誰だよ!?火神!?巨神兵はあっち行け!
「俺も一口貰っていいか?」
『えっ!?』
ニカっと笑う火神。あら、やだ。カッコイイ?
「……………」
『か、火神くんになら、全部あげても良いかな』
おずおずと弁当を差し出せば笑顔で受け取ってくれた。火神くん、カッコイイ…。
「名前さん」
『…うっさい』
「ボクには?」
『ないっつの!』
「ボクには?」
『だから、ないからっ!!』
黒子が視界に入る度に避けて嬉しそうに弁当を食べる火神くんに、はぅ〜と溜め息をついた。
「ボクも一口欲しいです」
黒子は見たくない。
『うっさい。自分のパンでも食べなよ。今更アタシのこと何だと思ってんの?』
私はそっぽを向いて爪を磨きはじめた。
「名前さんがくれないならボクが勝手に貰います」
『ちょっと頭大丈夫?』
マニキュアを出すと馬鹿にしたように黒子を見た。
するといつの間にか至近距離に黒子の顔があって口元をペロッと舐めた。
「ご馳走さまでした」
ご飯粒が付いていたので、と笑った黒子に火神は問う。
「何?お前等付き合ってんの?」
『はぁ!?私はこんな奴キライ!!むしろ私の好みは火神くんだっつの』
「もう、彼氏に嫉妬させないでください。ツンデレもほどほどに…」
シュンとした顔で私を見た黒子に思わず手を振り上げた。
『っざけんな!!テメェ、中学ん時、散々やりたい放題しやがって。アンタと私は付き合ってないっ!それからウザいんだけど』
「おー、アツアツだな」
ちょっ!?火神くん!?
「はい。ボクたちアツアツカップルです」
『火神くん、違うの!ねぇ、ホントだってば』
「じゃあ、邪魔者は退散するわ」
私の弁当を持って自分の席に帰ってしまった。イヤアアアッ!!愛しの彼がっ。
『火神くん…』
「そんなにボクが嫌ですか?」
嫌だっつぅの。反論する気も無いから黙ってマニキュアを塗った。
『……………』
「あ、水色のマニキュアですね。ボクをイメージしてるんですか?」
黙れよ、もう。
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