■ 29


朝、教室に入ると黒子が珍しく携帯を弄っていた。

『テツヤ、おはよう。珍しいじゃん。携帯弄ってるなんて』

「おはようございます」

カコカコと携帯のボタンを押す度に画面が切り替わる。
メニュー画面があの時のままで思わず笑った。

『そのメニュー画面、まだ使ってたんだ』

「なかなかにカワイイなと思いまして。待受もそのままです」

結構乙女なものにきせかえられた黒子の携帯のメニュー画面。
それは入学したてのころ、私が教室で発見した黒子の携帯にいたずらしたときのものだ。

『…テツヤって結構オ・ト・メ』

「ちょっとイラッとしました。何気に名前さんの携帯のメニュー画面と色違いって知ってるんですからね」

『はぁ!?何で知ってるの!?』

身を乗り出すと目の前に携帯をつきたてられる。
画面を覗き込むと、黒子と名前がキスしている写メ。

「懐かしいでしょう?」

思わず鞄を床に落として画面を隠そうとする。

『な!ななな何てモノを!?ちょっ、消せっ』

ひらりと上半身だけを動かし名前から逃げる黒子。

「…ちゃんと消しますよ。欲しいものは手に入ったので」


もう名前を脅す必要がないと言って目の前で削除された。


『テツヤ…、』

そんな様子を男前だと思って見ていた。しかし黒子は意地悪く笑い、携帯を再び弄る。



「実はバックアップを持ってたりします」



携帯の画面を名前に向けてキリッと言った。



『ふざけんなっ!!』

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