■ 20
朝日に照らされて名前は目を開けた。
『う…、あさだ…』
身をよじれば、メリッと何かを踏み付けた。
「い"っ…たぃ…」
『!?』
名前の下敷きになっている黒子を見て名前は慌ててどいた。
「……うぅ」
『くろっ、テツヤ!ごめん!!』
青ざめている黒子は起きていないが寝苦しかったらしく、うめき声しか聞こえない。
「……」
『……』
「……っ!こ、…」
『こ…?』
名前は黒子の顔を覗き込んだ。
すると次の瞬間、パッと黒子の目が開く。
「殺さないでくださいいぃ!!!!」
ガバッと起き上がった黒子は名前に頭突きをして、荒く呼吸をした。
ゴッと鈍い音がして名前も黒子も身もだえる。
『〜〜〜っ!』
「うぅ…」
お互いに頭がグラグラして涙目になってしまった。
***
「湿布いりますか?」
『いらね』
朝食のパンをかじりながら、互いの額を見て、たんこぶの具合を見ていた。
今日は日曜日。失敗に終わったデートも、やり直すチャンスなのだ。
「……」
『私、寝相悪かったでしょ?』
黒子特製のゆで卵をかじりながら言った。
「踵落としと、脛(すね)に…恐らく頭突きと、首締めですね」
『……ごめん』
寝ている間にプロレス技をかましてくるものだから、近いうちにスープレックスくらいはやられるかもしれない。
「別に気にしてないです」
『………珍しい。可愛いげ無いって言うとおもった』
黒子はムスッと名前を睨んだ。
「誰かさんがボクを下手に落としたんですよ」
『あら、誰かさんって誰のことですの?』
黒子の不機嫌そうな顔を見れて優越感に浸る。
「……カントクに部活を休むと電話してきます」
椅子を降りてリビングの隅にある電話へ向かっていく。名前はそんな黒子を見ていた。
『(凄い寝癖…。あれも私のせい?)』
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