■ 18



黒子が泣きそうな顔で見下ろす。

「じゃあ、どうやったら信じてくれるんですかっ!?」

私の腕を掴み上げて、つかみ掛かった体制から形勢逆転する。

『信じれるわけないじゃん!!黒子のせいで無駄にした中学生活を高校でも無駄にするなんてっ!』

「僕には無駄だとは思えませんっ!!」

私の目からは涙が溢れて、黒子は泣かまいと唇を噛み締める。

『私を虐めて楽しんだ充実した三年間だったもんね!?そりゃあ、無駄じゃないよねっ!?』

黒子の手が緩んだ隙に手を払いのけた。

「違います!!」

いきなり叫んだから黒子の声に驚いてビクッとなる。

『…うそつき』

「ただ、素直になれなかっただけですっ!!好きなことも伝える勇気もなくて、イジメという形でしか伝えられなかったんです」


『嫌い…、』

再び抱きしめられた。温かい。体温が伝わって、涙で目の前が見えなくなった。











***












黒子の家に名前が来た。黒子はドキドキしているが、当の本人は掛け布団を抱きしめたままベットの上で体育座りをしている。

「落ち着きましたか?」

ホットミルクにチョコを溶かしながら聞いてみれば、俯いたまま微かに頷かれた。

『ごめん。取り乱して』

「いえ。ボクこそごめんなさい。忘れてください」

チョコがあと少しで溶けきりそうだ。
甘い香りが漂う。名前は甘いのが好きなのかな、と思いながら掻き混ぜる。

『黒子……、』

「何ですか?」

小さいテーブルの前でクッションに背中を預けているボクに小さく名前を呼ばれた。

『これから、テツヤって、呼ぶから』

「は?」

危うくカップを落とすかと思った。

『お試し期間…』

「お試し期間?」

何故か兆しの光が見えた気がした。あながち間違いでは無かったみたいだ。

『…お付き合いの、お試し期間。タイムリミットは明日の夕方まで』

弱々しい声で言われた。つまり、試されるということだろうか?それとも、見定められるということだろうか?

「……わかりました。受けて立ちます」

まるで宣戦布告を受け取ったみたいだ。
名前にチョコを溶かし終えたミルクを差し出した。

名前が受け取り、自分は普通のホットミルクを飲む。

『……だから、今日は泊まってく』

「ぐぶっ!?」

思わず吹き出しそうになったのを何とか堪える。名前はカップを片手に携帯を開いてメールをカコカコと打つ。女子ってメール打つの早いよな、なんて思いながら一部始終を見ていた。

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