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バシャッとスポドリをかけられる。
キセキの世代の青峰と黄瀬の笑い話が体育館に響いて私は顔をしかめた。
緑間は私が何されても、どうでもいいという顔で見て、紫原はお菓子に夢中、シックスマンはいない。赤司は愉快そうに椅子に座っている。
私は誓った。コイツ等を許さないと。
時は数分前。二軍から一軍に選手が昇格するようにマネージャーも昇格する。
その日、私は一軍マネージャーに昇格した。マネージャーである桃井さんはいい人だ。しかし、桃井さんがいなくなった途端にキセキの世代が暴走を始める。
「ねー、キミさぁ新しい一軍マネジ?不細工っスねー!!」
そんなの承知済みだ、と笑えば頭にボールが当てられる。
「マネジはさつきだけで十分だぜ!出てけよ」
何様だよ、と心で毒を吐く。キッと睨めば緑間が気に入らないと言わんばかりに私にボールを投げつける。
『いたっ』
固いボールが床を転がった。
「…手が滑ったのだよ」
黄瀬もそれを見て私の上にスポドリを落とした。青峰も真似してスポドリをぶちまける。
そして冒頭に戻る。
目頭が熱くなるのを感じた。
『ふっ…、えっ……』
一体、私が何をしたと言うのだ。涙が止まらなくなって、しゃがみ込むと赤司がやって来た。主将らしいとこもあるな、と思えばポケットから鋏を取り出す。
「名前、女の子に泣き顔はよく似合う。だから前髪を切った方が良い」
『―――っ!!赤司くん、な、何を…!?』
シャキシャキと動く刃と赤司を交互に見つめていると前髪を捕まれた。
「赤ちん、えげつなーい」
ジャキンと聞こえて目の前に自分の色素の薄い茶髪がフワフワと落ちていく。
えげつなーい、と言うくらいなら助けてくれれば良かったのに。
「大丈夫ですか?名前さん」
後ろから声がして振り向けば腹黒い笑みで黒子が立っていた。
今まで黙って見てたのかよ。
コイツ等…、絶対に許さない。
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