■ 16



私が好きなんて選択肢は一番最初に切り捨てた。

『あ、魚?』

「…そうですね」

黒子が白い目で見ている。珍しく視線が集まっているから、これもミスディレクション?視線誘導ってやつですか?

『あ、小さいサメだぁ!可愛いっ!!』

「…そうですね。あの、補足ですけど名前さんが好きなんです」

『へぇ、そうなん。かっこわらい。冗談乙』

周りの温度が下がった気がする。
なんで人だかりが出来てんの!?

「………名前さん、流石にヒドいですよ」

『いや、騙そうたって、そうは行かないからね?』

黒子が眉間にシワを寄せた。

「……名前さん」

屈んで耳元で呟く黒子を殴ろとしたが、黒子の言葉を聞いた途端に手は動かなくなっていた。

「…今までごめんなさい。すべての初恋が終わってしまう前に聞いていいですか?」

黒子ってこんなに声低かったけ?なんて考えていたら抱きしめられた。

『え?あ、く、黒子!?』

「変わりますからっ!!君が気に入るボクに変わります。だから…、嫌いにならないでください………」




自分の心臓の位置が他人とは違う気がする。そのくらい全身が波打ち、熱くて、恥ずかしくなった。

『別に!…嫌いじゃないからっ!!』




…何言ってんだろう。私。一番、コイツが憎かったんでしょ?



「名前さん…」







『やっぱ、なし。聞かなかったことにして』

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