■ 15
日曜日、黒子が迎えに来た。中学の時みたいにポロシャツかと思えば案外オシャレだった。
ジーパンは変わらないけれど、上はカッターシャツでいつもなら考えられないが細身のネクタイを緩めて結んでいた。
『(ネクタイが珍しく緩い…)』
そして、極めつけは…………………ダサい上着。オシャレに関心が無いのは知ってたけど、これはっ…!!
「行きましょう」
『なんで上着がジャージなのっ!?』
キョトンとする黒子はジャージを眺めた。
「ジャージ、ダメですか?」
『珍しくオシャレしたと思ったら…!』
黒子を強引に部屋に連れ込みクローゼットを開けた。
「……?」
兄のを引っつかみ黒子に上着を投げつける。
『それ!着てっ!!ジャージは脱ぐっ!!』
「え?良いんですか?」
決めるならビシッと決めろよ、と言えば黒子はすごすごとジャージを脱ぎ、上着を着た。
『そっちの方がカッコイイから』
「でも、大きいです」
『うるせ。ジャージよりマシだ!!』
***
黒子と行ったのは水族館。本当に行くとは思わなかった。
『ジンベエザメかわゆす…』
「え?あれですか?」
黒子は水槽を覗き込む。
『ほら、こっち来た!!』
「名前さん並に可愛くないです」
頭を叩こうか迷ったけど、ぐっと堪える。偉いぞ!私!!
『デリカシーないよね。本当!』
でも皮肉は言ってしまった。
「……………」
しかし、黒子は無反応。いつもなら何か言い返してくるのに今日はだんまり。え、ちょ。どうしたのさ。少し不安なんだが。
『く、黒子?』
「……………」
『黒子ってばっ!!』
「……………」
少しイラッとして乱暴に肩を揺すってみる。
『ちょっと!!何なの!?ねぇ?反応ぐらいしてよ!最近の黒子、ちょっと変だよ!?』
それでも反応しないからビンタでもしてやろうかと思って手を振り上げた途端に黒子がハッとする。
「名前さん!」
突然名前を呼ばれ私はビンタを止めた。
『やっと、反応した…』
溜め息が出て黒子を見れば何やら真剣な顔でこちらを見ている。
「聞いてください…」
『あぁん!?』
さっきから周りの目が気になって仕方が無いんだけど。
「ボク、好きなんです…」
『…………』
黒子が少し頬を染めて言ってしまったという顔をして、そっぽを向いた。
「………」
『………何が?』
「は!?」
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