■ 10
『いたいよ…、やめてよ』
ボールが乱舞する中心に名前は泣き叫んだ。親と喧嘩してまで入部したバスケ部。努力は報われたのかすら分からないような状況。
パッツンになってしまった前髪。投げ捨てられるスポドリ。黒子が影で笑っていた。
許さない。絶対に。あんな奴、大嫌い。
***
「名前ちゃん!お願い!!マネジやって」
一年の教室にまで来てマネジを頼むリコ先輩。
『私、バスケ嫌いなんで。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いってね』
そっぽを向いた私の視界に黒子のドアップ。
『……………』
「おはようございます」
しゃがんでいる黒子を椅子に座る私が見下ろす(※身長的に目線は同じです)。
『ギャアアアアアァァァアアアっ!?』
ガタンと椅子を倒し立ち上がる。リコ先輩も驚いたらしく私に抱き着いて来る。
「なんで朝、置いてったんですか…?」
まさにこれだよ。黒子憎けりゃバスケまで憎い。
「黒子くんじゃない…。驚かさないでよ」
「カントクが勝手に驚いただけでしょう?」
驚くなって言う方が無茶だろ。
『…ったく、』
朝から気分が悪い。リコ先輩も黒子も、私をイライラさせる天才だな。
「まぁ驚いた云々はともかく、仮入部だけでも。帝光中のマネジやってたなんて、金の卵すぎて…」
「カントク、本音漏れてます」
あらヤダ、と口元を隠すけど今更。
『やりません』
チャイムがなってリコ先輩が渋々帰っていく。
「やらないんですか…」
『アンタが嫌いだから、バスケ嫌いになったの』
席に座り直して黒子が隣の席につく。
「あんなにバスケが好きだったのに?不思議ですね」
(笑)がつきそうなくらい皮肉混じりに言った。
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