■ 09
気がついたら彼女を虐めていた。笑うと綺麗で、優しくて、手当をしてくれるときも、ずっと相手の事しか見ていない。そんな彼女は特別、顔が良いわけじゃない。でも性格が優しいからかモテていた。
一軍に来たとき、頑張る彼女にボクらは少しばかりの加虐心が生まれた。
その時から愛情表現が暴力に変わっていった。それはキセキの皆も同じだったようで、今思えばボクはラッキーなんだと思える。
だって、名前さんと同じ高校なのだから。
チャンスが巡ってきたんだ。
***
朝から昨日の名前さんの事から離れない。またもや、彼氏という設定を使って火神くんと家にお邪魔した。
地下にいると言われ、言ってみれば名前さんは世間一般で言うドラムセットの小太鼓を叩いていた。
何かメロディを口ずさみながら流れる曲に思わず聴き入ってしまった。
案の定、名前さんに見つかったときに驚かれてしまい、ボクは率直に曲の続きを求めようとしていた。
浮かない顔をしてボクの隣を歩く名前さん。
どうやったら、伝えられるのかとバスケをするときのように必死に、試行錯誤する日々。
『何見てんのよ』
いつからか性格が変わってしまった名前さん。
原因はボクだ。
「いえ、やっぱり可愛くないなと思って」
『あっそ、』
ほら、また毒づいてしまった。高校で再開した瞬間から優しくしようと思っているのに。
[
prev /
next ]