「無理、しなくていいからね」
「だからしてねぇって言ってんじゃん」
真っ白いカーテンと真っ白い天井と真っ白いシーツと、そこに横たわる真っ白い顔をした一人の少女。
「毎日病院来て、明日死ぬかもしれない病人に会うなんて私だったら耐えれないけど…」
まっさらな青空を切り取った窓を見つめながら、彼女はどこか他人事のようにそう言った。(まぁ実際他人事なのかもしんないけど)
「俺のことなんて気にしなくていいからさ、サプリは病気を治すことだけ考えてなよ」
「…治らないよ」
「治る」
「治らないって」
「絶対治る」
「…ねぇあかや、」
「なに?」
「好き」
「おれも」
くすりと可笑しそうに彼女は笑った。
「病人だからって気使わなくていーよ」
「使ってねぇし」
「ふーん」
にこにこしながら再び彼女は窓へと視線を移した。
『私に良い思い出残してくれようとしてんでしょ』
好きな人に好きだと言われたから自分もと正直に伝えたら、いつだか返ってきた言葉。
そんなことないと何回言っても彼女は信じてくれない。
「好きでもないやつのとこに毎日来るわけねぇじゃん」
「そうだね」
うふふとサプリは笑う。
(ああ、その顔はやっぱり信じてない)
「あかや」
「ん?」
「ありがとう」
「…」
たとえ、嘘でも。
(嘘なんかじゃない)
(俺はあんたを愛してる)
fin.