朝っぱらから屯所中に響き渡った声は間違いなく総悟のものだった。
俺はすぐに総悟の部屋へ向かう。
普段からすかした態度をとる総悟が叫び声をあげるなんて、よほどのことがあったに違いない。
その上叫び声の発信源は総悟自身の部屋。
朝起きて早々にあげるなんて、まさか敵襲……。
そこまで考えると嫌な想像ばかりが沸き上がって、総悟に限ってそんなことがあるはずない、と自分に言い聞かせながらも、部屋に向かう足は自然と速くなった。
角を曲がって総悟の部屋の前に来ると、ちょうど反対側から名前が走ってくるのが見えた。
名前がちょうど襖の前に来たとき、俺は勢いよく襖を開いた。
「隊長!!大丈夫ですか!!」
「総悟ォォ!」
俺は多分、この瞬間を、衝撃を、忘れることはないだろう。
それは恐らく名前も。
襖を開けたそこには、勿論総悟がいた。
敵襲でもなく、部屋が荒らされた様子もない。
しかし総悟の部屋に総悟がいる、という当たり前の状況が全然当たり前ではなかった。
そこにいるのは間違いなく総悟、だが、
「んなっ、……」
「た、いちょう……ですよね…?」
「…………………あぁ」
俺たちの目の前にいるこの総悟は、どう見ても10歳そこらの子ども。
俺が初めて会ったときの総悟と同じくらいに、体が縮んでいる姿だった。
20121003
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