「副長ー!早く行きましょうよ!」
「わかったから急かすな」
交わされる会話。
別に今に始まったことじゃない。
今までだって数えきれないくらい同じ会話を聞いている。
でも、今改めて実感する。
この前は珍しく名前と見回りをした。
そう、珍しく、だ。
なら普段は誰が名前とペアなのかと言うと、死んでほしいランキングのトップを独占するあいつ。
自分の気持ちを不覚にも認めてしまった今、いつも聞いてたはずの会話が気になって仕方ない。
何でよりによってあいつなんだよ。
「なんだ、沖田隊長。今さらですか?」
「!、ザキ、お前それどういう意味でさァ」
「え、そんなまさか、無意識なわけじゃないでしょう?だって隊長、名前ちゃんのことが…」
「それ以上言うんじゃねェ!」
「いだっ!」
何で気がつかれた。
俺自身、気付いたのはこの前だってのに。
涙目になりながら俺が殴った頭を押さえるザキ。
まさかこんなに早く気付かれるとは…。
ふと視線を扉へやると、土方と名前が出て行くのが見えた。
「あーあ、うるせぇ馬鹿もうぜぇ馬鹿もいなくなったことだし、俺は今日はサボりやす」
「えー、仕事してくださいよ!」
「やなこった」
そう言って横になる。
「隊長、ちゃんとまじめに……あ、」
「?」
「そのアイマスクどうしたんですか?しかも手縫い…もしかしてそれ、名前ちゃ…」
「うるせぇな!もとはと言えばテメェのせいだろィ!!」
「いだあっ!」
アイマスクについて何か言われたのは初めてだった。
誰からもらった物か、ということ以前に、これが手縫いであることにすら、誰も気付かなかった。
暴力反対だとか何とか叫んでいるこの男、どうやら仕事の腕だけは確からしい。
20120321
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