考えてみれば簡単なことだ。
いくら名前がお世辞にも女らしくないとは言え、男の中に女が1人という状況は変わらないし、それに、何だかんだ言ってこいつは女だ。
それは、この想像以上に小さくて、華奢な体が証明している。
「名前はバカだねィ」
「…まじめなんですけど。バカとは何ですか」
普段の強気な態度と裏腹に、こんなことに悩んでいたなんて、やっぱりこいつはバカだ。
「名前が入隊するって決まったその日に、俺達はとっくに仲間になってらァ」
「そうですけど、でも!それはうわべだけのものじゃないですか!」
「……」
「私、性格こんなだし…、今も真選組に馴染めているかと聞かれたら、正直わからないんです…」
「………ぷ、ははっ!」
「!!、隊長!?」
ああもう、こいつは本当にバカ。
色んなことを簡単にこなしてしまうようでいて、人付き合いに関しては案外不器用らしい。
ひどいです!なんて睨んでくるが、目にたまった涙が迫力を半減させている。
「ったく、テメェがそんなタマか。名前はいつも馬鹿みたいにうるさくて、ムカつくぐらいに笑ってりゃいいんでさァ」
「!!」
「うじうじ悩んでるより、その方がお前らしい、と俺は思うけどねィ」
「沖田隊長…」
「と言うより、突然そんな風にされても、気持ち悪いだけでさァ」
「!!?、っ!」
「いてっ!」
鳩尾に一発パンチされる。
こいつ、いつもピンポイントで鳩尾ばっか狙ってきやがる。
名前は俺から離れて背中を向ける。
「あーあ、見直した私がばかでした。まあでも、」
「?」
「おかげで楽になりました。ありがとうございます!」
そう言って振り返った名前は満面の笑顔で、俺は不覚にも一瞬見とれてしまった。
「…笑っても気持ち悪ぃや」
「!!、今の取り消します!」
苦し紛れに出た言葉がこれ。
自分でも少し笑えた。
怒りながら俺に背を向けて歩く名前。
その後ろ姿に一言。
「アイマスク、ありがとうごぜぇやす」
思ったより小さな声になった。
名前に聞こえたかはわからない。
俺もまた、不器用なタイプらしい。
20120314
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