「真選組隊士ともあろう女が、どうして泣きそうになってるんですかィ?」
「!」
名前の部屋のふすまの横にもたれかかり、声をかけた。
正直、きちんと慰められる自信はない。
ただ、もしここで行動を起こさないと、ずっと後悔し続けるような、そんな気がした。
「…隊長は私を笑いに来たんですか。じゃあ好きなだけ笑えばいい。それでどっかに行ってください」
「……」
完全にふてくされている。
俺はこういう奴を見るとさらに傷をえぐってやりたくなる性分だが、ここは我慢だ。
今回は俺にも一応非がある。
「このアイマスクは俺に、でいいんだろィ?」
「……」
沈黙は肯定の意味だろう。
いつも異常な程うるさい奴がこうなると、どうも調子が狂う。
「……さっきは、まあ、何も知らなかったとはいえ、俺も悪いこと言ったと思いやした」
「……」
「……」
「…沖田隊長、」
「?」
「隊長も、人に謝ることはできる人なんですね」
「……」
俺は今すぐさっきの言葉を取り消して殴り込みに行きたい衝動に駆られた。
何なんだこいつは。
シリアスな場面がぶち壊しだ。空気を読むってことを知らないのか。
「テメェは俺を何だと思ってやがる。もう少し立場をわきまえろィ」
「はは、何を今さら」
そのとき、俺の横にあるふすまが開く。
「私も、色々すみませんでした」
「……泣いてさらに不細工になってまさァ」
「ぶさっ…!?、ていうか泣いてないです!!」
「……」
俺は名前の腕を掴んで引っ張り、自分の方へ引き寄せた。
ばーか。目が赤いんでさァ。
20120312
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