「沖田隊長のばーか!くそったれ!」
そう言いながら屯所内を走る私を皆がまたかよ、と言いたげな目で見てくる。
またで悪かったね。
私は自室に入り、音をたててふすまを閉めた。
アホみたいだ。
アイマスクが汚れたとか騒いでたからわざわざ買いに行ったら、同じの売って無いから、超絶めんどうだけど縫ってやったってのに。
まあ赤いアイマスク買って目の部分縫っただけなんだけど。
裁縫はできる方だけどさ、でも何も悪くない私が、天敵とも言えるドS隊長様のために縫ったって事実すごくない?
「それなのに隊長ときたら…!」
渡すと決めるまでにだってかなり悩んだし、勇気が出なかった。
それでもやっと渡そうと決めた矢先に、突然知らない隊士の人にちょっと話があるだなんて言われて。
まさか告白だなんて思わなかった。
しかも隊長に目撃されてからかわれるし。
最悪もいいところだ。
あんなことを言われてアイマスクを渡したら、まるで本当に私が隊長を好きみたいだ。
ただの善意なのに。
「むしろ嫌われたって別に…」
いい。
その一言が出てこなかった。
どうして私は泣きそうなんだろう。
勘違いされたから?
きちんと渡せなかったから?それとも、
「真選組隊士ともあろう女が、どうして泣きそうになってるんですかィ?」
「!」
この声が聞けなくなると思ったから?
20120312
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