「君のことが好きなんだ」
「は、はあ…」
屯所の裏側。
偶然側を通りがかった俺は、隊士(名前は忘れちまいやした)と名前の声を聞いた。
よく聞いてみりゃ内容は告白だった。
物好きもいたもんでさァ。
あんな女のどこがいいんですかねィ。
真選組にあまりに女がいないもんで頭狂っちまったのかもしれねぇや。
そんなことを思いながらも、こんな面白い場面を見逃せないため、ばれないように様子を伺う。
「あ、の…」
「わかってる、いいんだ。ただ俺は気持ちを伝えたかっただけ。それに君は沖田隊長が好きなんだろう?」
「は?」
心のなかで名前と同じ言葉を叫ぶ。
誰が誰を好きだって?
冗談じゃねェ。
どこをどう見たらそうなるのか教えてほしい。
あれが愛情表現ならとても普通の人間とは思えない。
まあ名前が普通の人間かと言えばそうではないが。
「いや、私は別に」
「素直になれないだけなんだろう?でも俺はわかってるから」
「だからちが」
「時間をとらせてごめんね。聞いてくれてありがとう。沖田隊長のこと、頑張りなよ」
そう言って良いことしたぜみたいな顔をして歩く隊士を呆然と見つめる名前。
「…え、まじ何なのあの人。ていうか………誰…?」
………同感でさァ。
20120307
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