部活が終わって人がいなくなった体育館。

エースはいつもそこで個人練習をしていて、それに付き合うのがバスケ部マネージャーである私の日課だった。


エースはバスケ部のキャプテンで、やっぱり周りの人とは比べ物にならないくらい上手。


でもその分誰よりも努力してるんだっていうことは、一年生の頃からずっと見てきた私は知ってる。



ただ、最近エースは少しスランプ気味。


スランプなんて誰にだってくるものだけど、エースはそれを克服しようと、ずっと努力してる。



「ちょっと休んだら?」
「ああ。そうだな」



ベンチに座る私の隣に座るエース。
その表情はやっぱり曇っていた。



「無理は良くないよ」
「わかってるけど…次の試合までにどうにかしないと…」
「…ほどほどにね」



次の試合は来週の土曜日。
三年生はそこで引退だから、エースにとっては最後の試合になるわけだ。



いつだってそう。
バスケ、バスケで私のことなんかこれっぽっちも見てないんだ。

でもそんなエースだからこそ、私は好きになったんだと思う。



「私はさあ、こんなこと言うのもどうかと思うけど、もう勝ち負けなんてどうだっていいんじゃないかなって思うよ」
「!?」
「最後の試合だから必死になるのはわかるけど、私は最後の試合だからこそ、楽しんでプレイしてほしい。そんな姿を見るのが好きだから、私はマネージャーをやってるの」
「…」



黙り込んでしまったエース。

やっぱり言わない方が良かったかな。
いくら近くで見ているとはいえ、本当にプレイしている人にしかわからない世界っていうものがあるからな…。


少し後悔していると、エースが立ち上がる。



「名前」
「?」
「いつもいつも、三年間、本当にありがとな」
「え…?」
「このシュートが決まったら、俺と付き合ってくれ」
「え!?」



驚いて何も言えない私をよそに、ダン、ダン、と音をたてながらドリブルをするエース。


緊迫した空気が流れる。


シュッと音をたてて放たれたボールは、きれいな弧を描き、リングに向かう。


リングの上をころころと転がり、最後にはきちんと真ん中に落ちたボール。


ずっと命中率が低かったエースのスリーポイントエリアからのシュートは、見事に決まった。



「エース…!!」
「こうやっていいプレイができるのもな、名前のおかげなんだぜ」


エースが、真剣な顔になる。


「名前、いつもお前に支えられてた。好きだ。付き合ってくれ」
「私も、ずっとエースのことが好きだったよ」



そう言うと、エースにぎゅっと抱きしめられる。


「三年間、お疲れ様」
「まだあと一試合残ってる」
「そうだね。楽しんでね」
「そのつもりだ」














ピピ―――――

「試合終了!」


結局、うちのチームはスランプを脱したエースの活躍によって相手チームに圧勝した。


その表情は私が見たなかで一番生き生きとした、楽しそうな表情で、やっぱり私はこの表情が好きだな。なんて。
愛の力



(おめでとう!)
(おう!名前のおかげだな)
(そんなことないって)
(名前が応援してくれたから勝てたんだ)
(ばか!照れる)


20111124


 
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