「笹川京子!!オレとつき合ってください!」
ある日の学校帰り。
沢田綱吉が笹川京子に告白しているのを見た。
何て言うか…すごい形相で。
綱吉は普段からとても優しい性格で、まずあんな人を驚かすような大きな声を出したりしない。
そもそもあんな表情は初めて見た。
持田先輩が必死に京子ちゃんにアプローチしているところに割り込んで行くっていうのもすごいし、何よりすごいのはあれだ、格好。
とにかく、色々斬新だ。
京子ちゃんは声をあげて逃げ、持田先輩もそれを追いかけて行ってしまった。
…とりあえず、綱吉に声をかけよう。
「綱吉、大丈夫?」
「!…名前ちゃん!?」
目に見えて慌て始める綱吉。
うん、いつも通りの反応だ。
良かった…。
「夏だからってそんな格好をしてると風邪ひくよ」
クーラーが効いた部屋とかは寒いため、夏でも持ち歩いている薄手の上着をかけてあげる。
「え…ありがとう」
「じゃあ私は行くね」
なんだか呆然としているような綱吉を背中に歩き出す。
まあ、普通あんな場面は見られたくないよね。
居合わせてごめんね。
でも、いいなあ。告白って。
好きな人にその想いを伝える。
言葉にすると簡単かもしれないけど、それはすごく勇気を必要とすること。
今の告白は、まあ…その、すごかったけど、綱吉は京子ちゃんのことがずっと好きだから、気持ちが本気なのにはちがいない。
綱吉は、勉強や運動が得意なわけではないみたいだけど、本当はすごく優しくて素敵な人なんだってことを私は知ってる。
クラスの人にも綱吉の素敵なところに気づいてほしいな。
こんな誤解は悲しすぎる。
京子ちゃんはどうなのかな。
綱吉の想いに気づいていたかは微妙だけど、少なくともダメツナ、なんてひどいあだ名を口にしたりはしない。
京子ちゃんはとてもかわいくて素敵な子だから、綱吉や持田先輩が好きになってしまうのもわかる。
京子ちゃんが持田先輩とくっついてしまっていたのなら仕方ないけど、個人的な意見を言わせてもらうと、持田先輩よりも綱吉に頑張ってほしい。
でも、持田先輩に不幸になってほしいわけじゃない。
ただ、京子ちゃんがどちらかを選んでしまえば、その時点で選ばれなかった方が辛い想いをするのは確実…。
ふう、とため息ひとつつきながら家路につく。
(ああ、なんて難しいんだろう。)
(誰かの幸せのためには、やっぱり誰かが辛い想いをしなきゃいけないのかな。)
(私は、皆が幸せな姿を見たいな。)
20111127
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