「イタリアに留学していた、転入生の獄寺隼人君だ」
銀髪に着崩した制服、ネックレス、鋭い眼差し。
うん、うちのクラスにはいないタイプだ。
あちこちから聞こえる女子の声。
これは新しい恋の予感!
多分彼に恋する女子はたくさん。
その中で誰がハートを掴めるか、だね。
でも彼の性格はまだわからないし、恋愛に対しての価値観もわからない…。
まあ、しばらくはじっくり観察しよう。
私はニヤニヤしそうになるのを必死にニコニコへ軌道修正した。
「(うわー。京子ちゃんと名前までニコニコしてるーっ)」
うん、京子ちゃんを見て焦る綱吉はかわいい。
なんてのんきに考えていると、
ガッ!
獄寺君はいきなり綱吉の机を蹴った。
綱吉はかなり驚いてるから、知り合いではない、よね…?
じゃあこの蹴りの真意はまさか……!!
ひ と め ぼ れ!
そうに違いない!!
照れて愛情表現がうまくできないだけなんだ。
それか恋愛に不器用なタイプなんだよ。
いや、ヤンデレという可能性も…!
いいね獄寺君!
すばらしすぎる。
これから二人はどうなっていくんだろう。
「あっぶねーっ。ヘタしたら半殺しになるところだったぜ…」
「大丈夫?綱吉」
「名前!?」
必死な表情で全力疾走する綱吉が見えて、気になって追いかけて来てしまった。
「(不良に絡まれて逃げてきたなんてかっこ悪くて言えないーっ)」
「何があったか知らないけど、半殺しは大げさだよ」
「はは…」
「そういえば平気だった?獄寺君に机蹴られてたけど」
「一応平気。でもあーゆーノリついていけないよ」
「そっか。まあ何かあったら私で良ければ話くらいは聞くよ」
「ありがとう」
むしろ私が聞きたい。
二人の関係がどうなるか気になる。
「目に余るやわさだぜ」
「「!!」」
噂をすれば、というやつ。
獄寺君、こんなタイミングで現れるなんて、そんなに私を喜ばせたいのか君は。
煙草に火をつける獄寺くん。
そして一言、
「オレはおまえを認めねぇ。10代目にふさわしいのはこのオレだ!!」
…―――――っ!!?
な、何て言った…!?
今告白…したよね?綱吉に!
つまり私への宣戦布告!!
そりゃ綱吉の隣は私なんかより獄寺君の方がふさわしい。
私は綱吉に恋愛感情を抱いてないからね。
でもだからって大胆過ぎでは?
二人はさっき出会ったばかりで…。
いや、これは愚問だ。
恋愛に時間も何もない。
結局相手を恋慕う心がものを言うんだ。
綱吉と獄寺君は何か話してるけど、驚きやら喜びやらでそれどころじゃない。
しばらくすると獄寺君はダイナマイトを取り出す。
「目障りだ。ここで果てろ」
やばい、大層ご立腹だ。
はい邪魔者ですよね私すみませんでした。
こちらに向かってくるダイナマイト。
焦る綱吉。
邪魔者は私なんだから、狙いも間違いなく私。
綱吉に怪我をしてほしくない。
「名前!!?」
そんな思いから、気づいたときには綱吉をかばうようにして立つ自分がいた。
(こんなところで綱吉が死んでしまったら、もう恋が実らなくなってしまうよ)
20111207
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