「あれ…?」
廊下を歩いていると、何やらいい香りがする。
これは多分コーヒーの香り。
周りを見渡すと、香りの発信源はなんと消火栓だった。
不思議に思い見つめていると、突然消火栓が開いて、中には…
「ちゃおっす」
「!?」
黒いスーツを着たかわいらしい赤ちゃんがいた。
「ちゃ、ちゃおっす」
とりあえず挨拶を返してみる。
するとスーツの赤ちゃんはニヤっと笑って、まあ上がれ、なんて言ってくる。
赤ちゃんなのに話してるとか、スーツ着てるとか、どうしてこんなところにいるんだろうとか、まあ疑問はたくさんあるけど、とりあえずその言葉に従い中に入る。
「おじゃましまーす…」
入り口こそ狭かったものの、中は信じられないほど広く、加えて高級そうな家具が設置されていて、とても快適な空間だった。
でも、消火栓の中のどこにこんなスペースが…?
そもそも消火栓そのものはどこにいったんだろう。
火事があったら大変なことになるよね、これ。
そんなことを考えていると、スーツの赤ちゃんに椅子をすすめられ、静かに腰をおろす。
「俺はリボーン。イタリアから来た殺し屋だ」
「殺し屋!?」
その歳で!?
かわいらしい顔してそんな職業を…。
……きっと苦労も絶えなかったに違いない。
世の中には私の知らないところでまだまだ苦労している人たちがたくさんいるんだ…。
「お前のことは知ってるぞ名前。ツナのクラスメイトだからな」
「綱吉の知り合い…?」
「俺はツナを一流マフィアのボスにするためにツナの家庭教師をやってんだ」
その歳d(ry
マフィアか…。
無縁すぎる存在だからあまりイメージわかないな。
ただ綱吉がマフィアってなんかあまり想像つかないけど、そのギャップはいいかも。
「名前はツナのことどう思ってるんだ?」
「どうって…」
綱吉と言えば、まず優しい。
それはもう彼の代名詞とも言えるんじゃないかな。
それでいて、まっすぐな目をしてるよね。
そして京子ちゃんに一途に恋する姿も…。
まあ一言で言えばあれだ、
「すごく素敵な人、だと思う。皆はダメツナなんて言うけど、私はそうは思わない」
「(やっぱりな)」
うん、何度考えたって綱吉のすばらしさは本物だよ。
ところでどうして私にそんなことを…?
…!!まさか!
リボーンは綱吉のことが好きなんじゃ…?
きっと昨日綱吉が持って帰った女物の上着が誰の物か聞いたに違いない。
それでライバルと勘違いしたのかも。
性別だけじゃなく、年齢まで飛び越えた愛か…。
私はそういうのも平気、というより愛に性別も年齢もきっと関係ない。
大切なのは相手を想う気持ちだから!
でもどうしよう、素敵な人だなんて言ったのはまずい。
綱吉は確かに素敵だけど、私はそういう意味で言ったわけじゃない。
そう考え、わたわたし始めた私をよそに、リボーンはニヤリと笑う。
すごい、笑えるほど余裕なんだ…!!
まさかライバルがいると燃えるタイプなのか!?
それともそれほどの自信があるのかな?
「名前には、ツナのファミリーになってもらいてぇんだ」
「!…ファミリー…!?」
「そうだ」
なんてすごいんだ!
余裕どころか自ら綱吉との接点になるようなことを持ち出してくるなんて…!
いや違う、きっと自分の目に見えるところにおいて監視したいのかも。
ならそれで誤解を解くまでだ。
「じゃあ、入れてもらおうかな」
「決まりだな」
表情がわかりにくいリボーンだけど、目に見えて嬉しそうな様子。
少し無謀な恋かもしれないけど、諦めることはしないでほしい。
でもリボーンの恋も応援したいけど、綱吉の恋も応援したい私はどうすれば…。
とりあえず、今はこの三角関係を見守っておこう。
そのあとはマフィアのことなどを大まかに聞き、私はリボーンとのティータイムを楽しんだ。
そこに焦った綱吉が現れるまであと少し。
(死ぬ気弾撃ってくれよ!時間がないん…って名前!?何でリボーンと一緒に!?)
(喜べツナ。お前のファミリー1号だ)
(んなあああ!?ていうかお前のそういうノリに名前を巻き込むなよ!)
(俺の愛人でもあるぞ)
(え!!?ちょ、意味わかんないよリボーン!)
((さすがリボーン!これは嫉妬作戦だよね!本当に綱吉のことが好きなんだなあ))
20111129
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