『うー…』


弾けないよぉ弾けないよぉ困ったよぉ! !!!


「お前、どうした?」



練習再開から数分後の私。鍵盤を虚ろな 目で1分間ほど見つめていたらしい。

やべぇ変人だと思われたかな。



『やっぱ、私無理だよ』



ぼそっと出てしまった弱音に対して聞こ えてきたのは大きなため息。


「あのなぁ、ネガティブになるな。お前 から明るさ取ったら何が残んだ」
『獄寺くん…ありがとう、あたしのこと よく見ててくれたんだね』
「お前予想以上のポジティブだな」
『え、意味の受け取り方違う?』
「まぁそれでいいけど、じゃなくてだな 。お前程度の実力で上手く弾こうなんざ無 理なんだよ」



ジョーダンの混じった話からは一転、な んか私すごい罵倒された?



「でもな、お前の音聞いてて思ったのは 楽しそうだってことだ」
『楽しそう…?』
「そう。お前の音は楽しそうだ」



あの人みたいに。


ビー玉のような翡翠の瞳で真っ直ぐ見つ められて、また心臓が跳ねた。



「だから、なんつーか…お前らしく弾け ばいんじゃねーの?たかが合唱祭だし… 」
『…ぶふっ』
「………………は?」




あ。


シリアスモード漂う音楽室に間抜けな私 の笑い声が響いてしまった。




「お前…今笑う所じゃないだろ」
『ごめん、獄寺くんが慰めてくれてるっ て思ったらなんか笑っちゃった』
「失礼だなテメー」



サッと頬を赤くしながら眉間にシワを寄 せる彼は何だか可愛らしい。 え?変態チック??


『ありがとう! でもさ、なんで私の心配なんてしてくれ たの?



クラスでも大した絡みはないのに、いや 私が一方的にかっこいいなぁイケメンだ なぁとか思ったりはしてたけどさ。


「別に…か、勝手に伴奏にさせられたお 前に哀れんだだけだ!」
『あぁ、さっきから私に向けられてる視 線は全部哀れみなんだ』
「哀れみだろうが何だろうが俺様直々に 教えてやってることを感謝しろ」
『うーん、まぁ確かに獄寺くんといられ て嬉しいかも……………あ』



思わず口から出てしまった本音に慌てて 手で口を抑える。このおしゃべりな口め !!

恥ずかしい発言を目の前でされても何も 言わない獄寺くんを恐る恐るチラ見する と、私を上回る顔の赤さで驚愕の表情で こっちを見ていた。



『あ、いやー…あの、私たち席近くにな ったことないじゃん!?だから、ホラ、ね !』


何が「ね!」だよと思っていたら 「そ、そうだよな!今教室の端と端だも んな!!」 と彼もノってくれた。優しいな獄寺くん 。



「おっおい、早く練習しろ馬鹿!雲雀に どやされんぞ!!」
『そうだね!早くしないと獄寺くん咬み 殺されちゃうね!!』
「俺が!?ま、まぁ…さっさと練習してさっさと帰 るぞ…名前」
『うん!』





露骨すぎるツンデレと鈍感すぎるおちゃ めさん、はたしてどちらが罪深いのか… 。


音楽室を覗きながら雲雀はそんなことを 思った。




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