先輩に引っ張られてやってきたあのCDショップ。

ぶっちゃけるともう二度と来たくなかったんだけどね。
まさか翌日に来てるなんて予想外すぎるよ。


「いらっしゃいま…――!!君は昨日の…!」
「…」


やっぱり実際に顔を合わせるのはつらい。

何も言えずに目を反らしていると、先輩がいつの間にか手首の代わりに引っ張っていた私の手を、ぎゅっと握った。



「こいつは、万引きなんかするようなやつじゃねぇ!」
「君は何なんだ…。大体その話は昨日終わったし、彼女がやったと認めたんだ」
「でも盗った瞬間を見たわけじゃないんだろ!」
「そりゃ…そうだが…」
「じゃあ、確認しろよ。こいつはやってないって言ってるんだ」


どうしてだろう。
どうしてこんなにも一生懸命になってくれるんだろう。
私達が出会ってから過ごした時間なんて、ほんの数時間程度なのに。


今話の内容は私のことなのに、私は目の前の光景がなぜか自分には関係のないもののように感じた。
無実を証明することよりも、先輩が私を信じていてくれるという事実にただただ驚いていて。



















「次は気をつけろよ」
「はい、本当にありがとうございました」



あれからあとのことは正直記憶が曖昧で。

ただ、エース先輩と店員が話し終わると監視カメラの映像を見ることになって(ていうか昨日の段階で見せてよ店員)。


カメラには試聴コーナーで試聴する私の後ろを若い女の人が通るとき、女の人が棚にぶつかってCDが落ち、私のバッグにダイビングヘッドしているところがばっちり映っていた。


そのあとは店員と店長に謝られ続け、なんか気まずかったからとりあえず店を出て、今に至る。



「あの、本当にありがとうございました」
「良いって。でも自分がやってないことは認めたりすんなよ」
「そうですね、身にしみてわかりました」
「よし、いい子だな」



またあのかっこいい笑顔で、ぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。


「じゃあ俺は学校に戻るけど、名前は今日はゆっくり休めよ。解決したとはいえ、学校のやつらのこともあるし、色々つらいだろ?」
「そうします。授業時間まで割いてしまってすみません」
「大丈夫だ。どうせ授業中はさぼってるか寝てるかだしな!」
「勉強してください」


まあ私が言えたことじゃないけどね。




じゃあな、と言って歩いていく先輩。
私はいつまでもずっと背中を見ていた。




(きっと私は)

(エース先輩が好きだ)




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