昨日あんなことがあったけど、それでも誰にも理由を言ってない以上学校を休む理由にはならないから、今日も登校。



「おはよう」
「!……お、おはよう」
「?」


下駄箱にいたクラスの子に挨拶をすると、何だかよそよそしいような態度をとられる。

そこまで仲がいいわけじゃないけど、そんな対応は初だよ。



クラスに着くと、今度は普段ものすごく仲がいいわけでもない子たち(この言い方失礼かな?)がこっちに来る。



「名字さん!昨日万引きしたって本当!?」
「………え?」
「ちょっと!言い方!名前ちゃんはそういうことしないよね?」
「えー、でもわかんないじゃん。こういう子が意外にってことも…」
「だから名前ちゃんは…」




二人はまだ何か言っていたようだけど、私にはもう何も聞こえなかった。

まるで私だけが世界から切り離されてしまったようで。

何も聞こえないし、言えなかった。


どうして。何で。私何かしたっけ。そんなことばかりが、頭のなかをずっとぐるぐる渦巻いていた。



朝から妙に突き刺さる視線の意味も、周りの生徒の内緒話を多く見かけた訳も、朝の下駄箱の子の対応の理由も、全部わかった。


「名字さん?」
「名前ちゃん?」


二人の声にはっとする。


「わ、私は違う!何もやってない!!」


思わず大きな声をあげてしまったようで、二人は驚いていた。

クラスの人もほとんどがこっちを見ていて、私はその視線から逃げるように教室を出ていった。



廊下に出てもいくつか視線を感じるし、正直吐き気がする。

泣き出しそうなのを必死にこらえて、走る。




あの階段はいつもの通り、人はほとんどいなくて少しほっとしながらも、早く学校から出たい一心で駆け降り始める。


「よ!名前」
「…エース先輩」



今一番会いたくない人が、そこにいた。



ただ、エース先輩は何も知らないようだったから、いつもの太陽のような笑顔で挨拶をしてくれた。

いつも通りな先輩。それだけで泣きそうになるのをまた必死にこらえる。
そして笑顔を作って答える。


「あはは、朝会うのは珍しいですね。…それじゃ」


これ以上先輩の顔を見ていたら泣いてしまいそうで、頭をペコリと下げながら、さっさと通りすぎようとした。

それなのに、


「おい!」

手首を掴まれて

「お前…大丈夫か?」
「っ!……大丈夫で」
「じゃあ何でそんな泣きそうな顔してんだよ」


私は作った笑顔が崩れるのを感じた。


(どうして先輩は)



20111115


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