少年時代の僕は蟻を惨たらしく殺すのが好きだった。
でも蟻は確か何メートルから落ちても死なない程頑丈みたいで、水を垂らしたり、油性ペンで体を塗り潰しても体がひくつくだけで中々死ななかった。

それを見て苛々した僕は蟻を指で潰した。ブチッと小さく音をたてた蟻は動かなくなった。

あ、やっと死んだ

幼心にそう思った。
それを見ていた母さんは僕に近づいて
「蟻さんだって小さい体で生きてるのよ。可哀想なことはもうしないであげて」
そう言った。

母はそれっきり何も言わなくなった。僕もなにもしなくなった。


前置きが長くなったがそんな幼少期を過ごした僕はきっと蟻に呪われてるのかもしれない。
呪い?

自分で言うのもアレだがそこそこ人気があるらしい。
表立ってではないけど痛い程ひしひしと感じる視線に気付かないほど僕は鈍感ではない。
普通ならモテるなんて嬉しいし喜ばしいことだろう?
ただ自分の場合、普通とは訳が違う。
モテるはモテるでも“同性”にモテるのだ。多分性的な意味も含むだろう。

女性同士はまだ良いと思うが男同士でなにをどうするんだ。気持ち悪い。

……というか自分には愛するということ自体が無理なのだ。
誰だって自分が一番に決まってるし自分は人とは違う欠陥品なのだから。


…あ、もうこんな時間だ。

僕は自室から出て、寮から歩いて10分の位置にある学園へ足を向けた。



20111227