小さい頃から童話が好きだ。
特に白雪姫が好きで、家にある姿見に「鏡よ鏡、世界で一番僕を、あいしてるのはだあれ?」と聞いたこともあった程。

たまたまそれを見た兄さんに「気持ち悪ぃ」と言われたことを今でも忘れていない。
あのときは何故兄さんに気持ち悪いと言われなくてはいけないんだ、と思ったが今考えれば仕方のない事だと思う。女の子ならまだしも僕は男の子だったから。
それを兄さんから聞いた母さんは
「雪は雪だから気にしなくて良いのよ。」
とにっこり笑いながら言った。
あのとき、別に僕は気にしてなんかいなかったのに、と今でも思っている。


それから数年が経ち、僕は高校生になり彼女もできた。同級生のミカちゃんは大人しくていつもおどおどしていた。
7歳年の離れた兄さんは結婚した。今流行りの出来ちゃった結婚だった。


そんなある日、僕は「鏡よ鏡、」と家にある姿見に呟いた。

このせかいで僕をあいしている人はだあれ?

呟いた声が空気中に消えていった。


僕は兄さんが好きだった。性として、兄さんが。
報われないこのちっぽけな恋愛感情をミカちゃんで晴らしていたが、この前ミカちゃんに振られた。
しかも二股で僕は浮気相手。女は見かけに寄らないらしい。

この事が僕の兄さんに対する思いを強くさせたが今日でこれもお終い。
僕は魔女の毒林檎ではなく風呂場にあった洗剤で自ら命を立った



この遺書を書いた二日後、病室のベットで僕は目を覚めた
右隣には椅子に腰掛けた兄さんがいて
「ここ天国なの?」
と有りがちな台詞を僕が言うと兄さんは微笑みながら「馬鹿」と一言だけ呟いて僕を抱き締めた。



2012317