君が死んだ。大好きだったお前が。
元々死にたい死にたいばっか連呼してたけど本当に死ぬなんて思わなかった。
だから着々と進んでいくお前の葬儀を見てれば見てるほど現実味がなくて涙なんか出なかった。
でも棺に入った青白い顔をしたお前を見て、やっとこれは現実なんだと実感した。

帰り道、制服のポケットに入れてたウォークマン。
電源を入れたらお前が良く聴いていたあの曲が流れてきた。カラオケ行ったら絶対歌うと約束していたあの曲。
聴いてみたら苦笑した。あいつこんな曲好きだったんだーって思って。


俺は暫くしてあいつが死んだ廃ビルの屋上に行った。今日は風が吹いていなく、見事に秋晴れだった。
高い、高い、高い。あいつはこんなに高い所から落ちたのか。でも不思議と実感は沸かなかった。

「俺も今からお前のとこに行くよ。今度はお前も一緒に生まれ変わろうな」

俺はお前が死んだ場所に向けて身を投げた。
あの曲だけを残したウォークマンを冷たいコンクリートに置いて。


「…って夢見たんだ。」
「縁起悪っ…。いくら死にたいって連呼してても本当に死ぬほど馬鹿じゃないよ俺」
「えっまじで?」
「言っておくけど俺、そんなに馬鹿じゃないから!」

今日も俺たち二人の日常は秋晴れと共に平和で、あいつはウォークマンであの曲を聴いていた。



2012/2/12