女の子に案内され、俺はリビングにあるソファに座るように促された。
女の子は三浦雪と言った。舜の姉らしい。自分よりも3歳年上らしい。
俺は驚きを隠せなかった。俺が5年前に引っ越した時まで舜に姉などいなかったのだから。

それから今までの自分がここに戻ってくるまでの経緯を説明すると雪さんはあーそっかーとぶつぶつ言いながら俺に説明した。

2年前に舜の親父さんと雪さんの母親が再婚し、4人でこの家に住み始めたらしい。
でも母親が舜と馴染めなく次第に舜を無視するようになり、いつの間にか親父さんも舜を無視しだした、と。

ここまでの話を聞き、俺は雪さんに疑問をぶつけた。

「雪さんは舜を助けなかったんですか?」

空気が重くなる気がした。どうやら俺はまた地雷を踏んでしまったみたいだ。

「…言い訳になるけど最初は舜を庇ってた。でも庇っていくうちに母さんが私まで無視するようになって、怖くなって…」

冷静な口調で淡々と話す雪さんは泣き出しそうなくらい目を潤ませてる。
暫くし、俺の視線にやっと気付いた雪さんはごめんね、変なとこ見せて、と言い苦笑いをした。

「そういえば舜に会いに来たんだよね、すっかり忘れてたけど」
「あ、はい…」
「ちょっと待ってね」

携帯をカチカチと動かしながら雪さんは、携帯の赤外線を受信状態にしてほしいと言ったので俺はそれに従った。
暫くして赤外線で送らてきたものは舜という名前と見知らぬ携帯番号で。

「ごめんね、舜のいる場所わからないんだ。でも携帯番号は変わってないはずだから」

連絡を取ってないんですか?と聞くと雪さんはなんか気まずくて、と苦笑いしながらそう言った。
俺は今からでも遅くないと思いますよ、と言ったが雪さんにこれは私にしかわからない事だからと言い返されてしまった。

「今日はなんだかすみませんでした」
「いや気にしないで、私こそごめんね」

玄関先でたわいのない会話をし、俺が帰ろうと踵を返したとき雪さんが舜の事宜しくね、と言った。
聞こえない振りをし、雪さん、俺に舜が守れると思います?と自分を皮肉りながら父の実家まで戻っていった。