「あのさ、」

行為を終えた直後だった。
彼がなにかを切り出そうとしている。でも俺には彼が何を言うかくらい検討がついていて、


「…別れよう」

ほら、やっぱり。

「うん、わかった」
「…え?」


彼が驚きながら目を見開く。理由なんて至極簡単だったんだ。

「今まで付き合わせてごめんね。もう終わりだから」


彼は普通の人。簡単にいえばノンケ。それも現在進行形で、だ。
前までは女性としか付き合ったり、そういう行為をしたことがないらしい。
本人の口から聞いたのだから本当のことだろう。

それに比べて僕はゲイだ。
この性癖に気付いてからは男性としか付き合ったこともあんな行為もしていない。

普通の彼からしたらこの関係にはもう疲れたのだろう。
周りから白い目で見られ、気持ち悪いと否定されるこの関係に。

「今まで有難う。早く良い人見つけなよ?」

精一杯微笑む僕に対して申し訳なさそうに眉を下げる彼
会話の間に着替えを済ませた。
……出来れば早くここからいなくなりたいから

「鍵返すね。ありがとう、バイバイ」

何か言い掛けようとした彼を気にせず僕は玄関のドアを閉めた後に無我夢中で駅まで走った
この世界はやっぱり優しくないらしい

空にはとても綺麗な三日月が見えていた



20120407
加筆